前回は、太陽光発電投資で不可欠となる「メンテナンス費用」について、具体例を交えて説明しました。今回は、「太陽光発電投資はもう儲からない」という向かい風を吹かせた2つの出来事について見ていきます。

投資家の売電価格は年々引き下げに・・・

超ローリスクで年間利回り10%を確保できる。しかも、初期投資額は1000万円台。これほど旨味もあって手軽であるにもかかわらず、太陽光発電投資は向かい風を受けていると言われます。

 

理由の一つは、固定価格買取制度に基づく買取価格、つまり投資家にとっての売電価格の引き下げです。売電単価は2015年7月以降、キロワット当たり27円+消費税と定められています。消費税率8%で計算すると、同29.16円です。ところが買取制度が始まった2012年度の売電単価は、キロワット当たり40円+消費税。消費税率は当時5%ですから、それをもとに計算すると、同42円。つまり、いまの売電単価に比べ1.5倍近く高い水準だったのです。

 

売電単価は、そこから毎年度、引き下げられてきました。2013年度はキロワット当たり36円+税ですから、当時の消費税率5%で計算すると、同37.8円です。翌14年度はキロワット当たり32円+税です。消費税率はすでに8%に引き上げられていたので、それをもとに計算すると、同34.56円になります。

 

2012年度から順に並べると、キロワット当たり42円、37.8円、34.56円、29.16円という推移をたどっています。投資家の立場からすると、売電単価の引き下げは残念ではありますが、制度のもともとの趣旨が太陽光発電システムの普及を促すことによって発電コストを引き下げることにあるのですから、その発電コストが下がってきたのであれば、それはやむを得ないことではあります。

接続契約の急増によって出力制御ルールも見直し

売電単価の引き下げに追い打ちを掛けたのが、いわゆる「九電ショック」です。2014年9月、九州電力が突如、売電に向けた系統接続の申請への回答を保留したのです。つまり、固定価格買取制度に基づく設備認定を受けた太陽光発電システムを、実際に稼働させることができない事態に陥りました。

 

それが全国に波紋を広げる中、2015年1月には出力制御ルールが見直されました。出力制御とは、電気の供給量が需要量を上回ることが見込まれる場合に行われる出力抑制です。

 

それまでも、出力500kW以上の大規模な太陽光発電システムは適用対象でした。その適用対象を、500kW未満のシステムにまで広げたのです。そのうえで、無補償の出力制御が可能な範囲を、1日単位を前提に年間30日までという形から、時間単位を前提に年間360時間までという形に改めました。そして、そうした時間単位での出力制御を可能にする遠隔制御用のパワーコンディショナーなど必要な機器の設置を求めてきました。電力会社側が、「備え」を講じるようになったのです。

 

背景にあるのは、接続契約の急増です。九州電力によれば、2014年3月の1カ月間だけで、それまでの1年分の申込量に相当する7万件以上もの接続契約の申し込みが寄せられたと言います。その後、同年7月現在までの申込量がすべて接続されたとすると、新規の接続量は風力も合わせて約1260万kWに達することが分かったのです。これでは、冷暖房の使用が少ない春や秋の晴天時、日中の消費電力を太陽光や風力による発電電力が上回って、電力の安定供給に支障が生じる、と説明しています。

 

電気はためることができません。「同時同量」と言われるように、発電した供給量はそのときに消費される需要量に見合っている必要があります。需給バランスが崩れると、周波数が増減してしまうのです。周波数とは、静岡以東で50ヘルツ、静岡以西で60ヘルツに定められているものです。これが増えたり減ったりしてしまうと、例えばモーターを使用する生産設備には回転数の狂いが生じます。周波数変動に対応するインバーターを備えていない家電製品には動作不良が起きかねません。

 

電力の安定供給は、電力会社の使命です。そのため、そこに支障を来しかねない事態に対して「備え」が必要になってきたのです。そして同じころ、2015年度の固定価格が前年度に比べてさらに引き下げられる方向にあることも報道されました。この2つの報道が重なって、太陽光発電投資はもう儲からない――そういうムードが急速に広がり始めたのです。

本連載は、2015年10月28日刊行の書籍『「マンション経営」よりラクで、確実に儲かる!太陽光発電投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「マンション経営」よりラクで、確実に儲かる! 太陽光発電投資

「マンション経営」よりラクで、確実に儲かる! 太陽光発電投資

松田 貴道

幻冬舎メディアコンサルティング

電力会社の買い取り価格の単価がこの3年で約3割も下がり、最近では「太陽光発電はもう儲からない」と言われるようになってきました。しかし、投資額を抑えたり発電量を確保することで、投資利回りを下げずに済みます。やり方次…

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