RC造のほうが丈夫で長持ちするが・・・
建物を新築するとなると、まず決めなければならないのが、建物構造です。
賃貸物件を建てるのであれば、選択肢としては木造のアパート、RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションということになります。
結論から言うと、新築で高利回りを実現するためには、木造アパートの選択がもっとも現実的でしょう。
特にRC造マンションは、圧倒的に建築費が高く付きます。事業化レベルの投資家系大家さんや、代々の大地主で不動産賃貸業を家業としているような地主系大家さんでなければ、RC造にはなかなか手が出せない、と言うのが実情ではないでしょうか。
実際、私の物件は、すべて木造建築です。
ここで、木造アパートと言うと、「築年数が経過すると、すぐに古びて、薄汚くなってしまうのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、それは間違った先入観です。
確かに、木造とRC造の建物を単純に比較すると、RC造の方が丈夫で長持ちします。ただし、当たり前の話ですが、いくら丈夫なRC造マンションであっても、無限に長持ちするわけではありません。一般的には築20年〜30年あたりで、いろいろな設備が老朽化し、修繕やメンテナンスが必要となります。
問題は、その修繕やメンテナンスにかかる手間や費用です。
RC構造は、丈夫であるが故に、木造よりもメンテナンスやリフォーム時のコストが高く付き、壊す時もお金がかかりがちなのです。
例えば配管のメンテナンスについて考えると、RC造の場合は配管がコンクリートの中に埋まっており、交換に莫大な費用がかかります。それに対して木造の場合は、RC造よりはるかに安い費用で配管の交換などが可能なのです。
結局のところ、建物はメンテナンスが命です。手入れを怠り築10年でボロボロになるRC造マンションもあれば、こまめに手を入れ築50年でもピカピカの木造アパートもあります。それが入居率にどれだけ影響するかは、明白でしょう。
そう考えると、メンテナンスがしやすく、リフォームもリノベーションも容易にできる木造の方が、むしろおすすめなのです。
それに、最近は木造であっても新築時には建物の保証が10年ありますし、さらに「長期優良住宅」の最新性能を積極的に取り入れた良質な木造建物であれば、かなり長い期間、修繕やメンテナンスの費用はかかりません。したがって、「木造は建てた後の費用がかかるのでは?」と心配しすぎることはないのです。
税務上「早めに費用を償却できる」木造のほうが有利
また、木造は税務上も有利です。
ご存知の方も多いでしょうが、建物は減価償却など税務処理を行う必要上、「法定耐用年数」というものが決められています。
RC造の法定耐用年数は47年、木造は22年です。
したがって、同じ金額の建物だとすると、木造では22年、RC造では47年で減価償却していくため、木造の方が毎年の償却額が多くなり、税務上有利になるのです。
ただし、木造では22年で減価償却が終了するため、築22年を経過した後は減価償却費が計上できなくなり、結果、支払う税金が大きくなってしまうことには注意が必要です。
このあたりは、詳しくは税理士などの専門家に確認していただきたい部分ですが、基本的には耐用年数が短い木造の方が、早めに費用を償却できることになるため、有利だと考えていいでしょう。
なお、耐用年数に関連して、銀行からどれだけ融資してもらえるかが気になる方もいるでしょう。銀行は、担保となる物件の耐用年数の残存年数を基準に融資を行うからです。
ただ、これは中古物件を買う場合には問題になりますが(例えば、既に耐用年数を過ぎた建物と評価されると、担保不適格な物件として融資を受けられません)、新築では大きな問題ではありません。
融資状況は時期や物件、借りる人によっても変わるものなので一概には言えませんが、現状では、新築アパートに対しては木造でも金利1〜2%で融資期間30年というのが一般的です。例えば私の場合、1.2%で30年の融資期間になっています。
また、昨今は木造アパートがRC造の建物のレベルに近づいてきていることもあり、その住宅性能をきちんと評価して、新築の木造アパートに対して、通常の木造住宅の耐用年数を超える、長期の融資を出す銀行も出てきています。
このように、木造であっても新築アパートであれば、長期・低金利で融資を組めますから、無理のない返済収支で安定した賃貸経営を実現することが可能なのです。