今回は、副業と会社の就業規則に関する疑問について、特定社会保険労務士・CFPの榊裕葵氏が回答します。※本連載では『新しい副業の教科書』(インプレス)から一部を抜粋し、有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役・藤木俊明氏が従来の副業とは違う「新しい副業」を紹介します。

会社側による「副業の全面禁止」は違法だが・・・

 Q  就業規則に「副業禁止」とあったら副業はムリ?

 A  本来会社は従業員の副業を全面的に禁止することはできません

 

社員は、会社との雇用契約によって定められた勤務時間にのみ労務に服するのが原則であり、就業時間以外は、副業への従事を含め、私生活で自由に使うことができるのが大前提です。ですので、社員のプライベートな時間に対し、就業規則によって会社が副業を禁止することは、法律上は原則として許されません。

 

ただし、過重労働の防止や、会社の信用・秩序を守るために副業を「許可制」とすることまでは許されると考えられています。それを踏まえ、自社の就業規則が、副業を「全面禁止」と定めていても、全面禁止は法的には違法なので、実務上は許可制に準ずると考えて、教科書的な答えとしては、「全面禁止または許可制の場合は会社の許可を得て行いましょう」になります。

 

 

「許可制」→「届出制」変わる就業規則について

厚生労働省は2017年11月20日、企業が就業規則を制定する際の公的なひな型として影響力を持つ「モデル就業規則」について、副業を認める内容に改正する案を有識者検討会に提示しました。それは「許可制」が「届出制」に変わることです。「許可制」の場合は、会社が副業の許可・不許可に幅広い裁量を持ちますが、「届出制」の場合は、問題がある副業以外は原則自由に行えるということになります。2017年度内(2018年3月中)にも副業・兼業が、公的に事実上、解禁される見通しです。

 

 Q  就業規則には「副業禁止」とないが気をつけることは?

 A  過労になる、社会的に問題がある、本業と競合する副業はNG

 

「許可制」のままでも、「届出制」に変わっても、やはり会社から認められない副業への取り組み方はあります。副業の可否を巡って労使でトラブルが発生した場合、裁判所は、副業をすることによる本業の業務遂行への影響の有無を、副業禁止が有効かどうかの判断基準としています。

 

副業にのめり込んで深夜まで働き、本業の会社に遅刻するというようなことはあってはなりません。

 

また、本業と同じ業種で副業を行うこと、つまり競合関係になるような副業は認められません。

 

マルチ商材を扱うことや反社会勢力と接点を持つような副業は社会通念上も解雇相当と考えられますから絶対に避けるべきです。

 

届け出るかどうかは、本業の「企業文化」から判断を

 Q  副業禁止ではない会社でも会社にいうべき?

 A  企業文化なども考えて現実的に対応しましょう

 

就業規則では問題ないのに人事考課が下がる会社も実際問題として、副業を正直に会社へ届け出るかどうかは、多くの副業希望者が悩むところでしょう。私自身は、原則としては会社のルールに従うべきですが、本業の会社の企業文化をよく見極めた上で最終判断すべきだと考えます。

 

例えば、周囲もオープンに副業を行っていて、それが問題視されないような企業風土であれば、届け出ることも選択肢の一つでしょう。

 

しかしながら、就業規則では問題なくとも、自分以外は誰も副業を行っておらず、副業をしたいなど申し出ようものなら、それだけで人事考課が下がってしまうような職場も少なくはないと思われます。その場合はあえてオープンにしないという考え方もあります。

 

そもそもなぜ副業をするのでしょうか?

届出をせずだまって副業をやっていても、バレるリスクはゼロではありません。その場合、人事考課への何らかのマイナスは避けられない可能性が高いので、発覚したときの自分なりのシミュレーションを立てておく必要があるでしょう。そのために、「自分は、なぜ副業を行うのか」ということについて、今一度考えてみてください。副業の目的が「生活費の足し」なのか、「自己実現」なのか、「独立準備」なのかによって、シミュレーションの中身も変わってくるはずです。
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秋葉原副業総合研究会

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