貧困が広がる一方、超富裕層の冨の占有率は増加
北朝鮮とアメリカの対立も例外ではありません。北朝鮮の根本的な問題も貧困です。
イスラム諸国、アフリカ、中南米、アジアの一部も同じく貧困の坩堝(るつぼ)と化しています。平和で富裕な日本にいるとなかなか実感できませんが、想像を絶する貧困が世界各地に広がっているのです。
国民がひと月10ドル、あるいは100ドル以内で暮らしている国が、実はいっぱいあります。身近な例では、あの軍事大国ロシアの平均的な月収は300ドル(3万4500円・1ドル115円換算)です。月3万円から4万円で生活するのは大変です。一向に改善される見通しもありません。むしろ悪化しつつあります。貧困が伝染病のように拡大しつつある。
この富の格差こそが、深刻な問題を生んでいるのです。
世界で超富裕層と呼ばれている人々は、およそ世界の成人人口の0.7%。100万ドル以上の金融資産を持っている人たちです。
この0.7%未満の人たちが、世界の富の46%を占めているという統計(図表2)が、最新のデータとして2016年末に発表されました。富の占有のパーセンテージは今もなお止まることなく増加し続けています。
[図表1]2015年~2016年の総資産の変動
[図表2]世界の冨のピラミッド
極端な冨の偏在が、市場の波乱・相場の波乱の根本要因
世界の富裕層、つまり世界人口の5%未満の富裕層が、世界の富の50%以上を占めるのも、もうそんなに先のことではありません。ここ数年で起きると予測する専門家たちもいます。3年後の2020年にはそうなるというデータもあります。
また、世界の超大富豪上位8人の資産が、下位半分の36億人の富に相当するという驚くべき調査結果も公表されました(国際NGO オックスファム)。
このような極端な富の偏在が、世界の紛争と対立、経済でいえば市場の波乱、相場の波乱の根本要因であるといっても過言ではないのです。
今後もますます富の格差は広がっていくでしょう。そしてますます富める者と貧しい者との対立が先鋭化していくことは避けられない。富の格差がまた別の新たな対立を生み、新たな紛争を引き起こすのです。例えば、中国企業でアリババという会社があります。
オンライン取引などのプラットフォームサービス会社ですが、短期間で時価総額44兆円という企業に成長しました。一方で、中国ではまだひと月100ドルで暮らしている人たちがたくさんいるのです。これが大きな富の格差の一例です。
この格差は早晩、怒り、憎しみの感情を増幅させて、富める中国共産党支配層に対しクーデターが起きてもおかしくない状況を生んでいます。そういう背景もあって、現在、インターネットを中心に中国共産党による国民の監視は日増しに激しくなっているのです。