デザイン性や使用面は新築と比較できないが・・・
2回目の大規模修繕工事を迎える頃のマンションは、生活価値の成熟期にあたります。つまり、20年余りの営みを重ねてきた住民のライフスタイルや人柄の集合体が、それぞれのマンションに独自の雰囲気や個性となってにじみ出てくる時期なのです。そのようなマンションの個性は、日々そこで生活している人にはわからなくても、逆に外部から見るとはっきりとわかります。
築20年のマンションは、デザイン性や使用面では新築マンションと肩を並べるのは難しくなっているはずです。もちろん新築時の施工状態がしっかりとしたものであれば、耐震性や耐久性といった基本的な性能は特に問題はないはずですが、空間構成やデザインなどは、魅力的な装備満載の新築マンションとは比較できません。
雰囲気の向上プラス「使い勝手の良さ」を考慮
最近の傾向として、2回目の大規模修繕工事において同時に建物の改良・改善工事を行うケースが増えています。それは、この時期が低下してきた資産価値へのてこ入れを考えるタイミングと重なるからです。当然、工事にあたってはそのための手法を考える必要がでてきます。その基本もまた、自分たちのマンションの個性を伸ばしていくことです。
たとえばエントランスホールはマンションの顔であり、また個性を表現しやすい場所です。使用頻度も高いところですから、傷みも激しく改良・改善工事の重点箇所となります。それにあたっては、築20年=新築当時の住民も20歳年齢を重ねてきた点も考慮すべきでしょう。
具体的には、集合玄関の扉を改修することや、スロープなどをより使いやすく改良することで、生活しやすさを高めることができます。エントランスの工事を実施するのなら、その雰囲気を向上させることに加え、このような実利的な部分にまで踏み込むべきでしょう。明るくきれい、そして使い勝手の良いエントランスであれば、資産価値の面でも評価が向上します。
一方、機械式駐車場を撤去して平置き駐車場に変える事例も近年増えています。機械の維持費と駐車場の利用者数のバランスがとれなくなるタイミングが、ちょうど2回目の大規模修繕工事の頃と重なることが多いのがその理由です。
必要な部分と不要不急な部分を見極めて、修繕や改良・改善内容の取捨選択を行うというのが2回目の大規模修繕工事の特徴です。これは理事会の理事の方々がマンションを長年使いこなしてきたうえに、その将来の姿をより適確に見極める力も備わり、修繕積立金をどう使えば自分たちのマンションの価値に有効かがはっきりとわかってくるからこそ可能なことです。管理組合全体の難しい合意形成を乗り越え、このような改良・改善工事を実現し、次のステップへと進む理事会が多いようです。
私はコンサルタントの立場ながら、いつもその熱意とやり遂げる実行力に感心させられます。20年をかけて共同体としても成長してきたことで、建物の個性や、必要な機能、不要な設備などについて、自分たちならではの一定の基準で判断できるようになってきたことも影響していることでしょう。