設計コンサルタントの「最も重要な仕事」とは?
多くの方々より「コンサルタントは何をしてくれるの?」「どのようなコンサルタントを選べばいいの?」といったご質問が寄せられます。改めてお話しします。
コンサルタントの最も重要な仕事は、マンションの現状の技術的把握とそれらのデータを基に改修計画案を作ることです。
これらの仕事は、デベロッパーや新築時工事会社とは独立した第三者の立場で、マンション管理組合に寄り添い、進めていくことが重要です。まさにこの姿勢がマンション改修コンサルタントに求められるのです。そのうえで、しっかりとした技術判断のもとで合理的な改修計画設計がなされることが、まずなによりも重要です。
一方において、それらの計画案を実行し高品質で安全に工事を完了させることをサポートする仕事です。
また、最近ではそれらの工事内容を住民の皆さんに説明をし、合意をしていただくことも設計コンサルタントの重要な仕事となっています。
選択の基準は、経営的評価・相性・費用など多岐に渡る
近年、多くのコンサルタントがあるなかで、質の低い技術を提供するコンサルタントや、工事業者との癒着を疑われるコンサルタントの存在も指摘されています。
ここで改めて、コンサルタントの選び方をお話しします。
①技術的多様性
現在、マンションの改修には総合的な複合技術が必要となってまいりました。かつての個人的経験値や技術では見極めは非常に難しいものとなっています。
コンサルタントを選ぶ場合、しっかりとした組織体と多様な技術能力を持つ人材を有しているのかを見極める必要があります。具体的には、
・コンサルタントの実績の資料の確認及びその内容を説明してもらうこととともに、実績の一覧表を検証してください。
・所属する技術者の能力と経験・実績・資格をすべて確認できる技術者一覧表を提出してもらい検証します。できれば全技術者のものを提出してもらうことをお勧めします。
・コンサルタント事務所を訪問し、所員の実在の確認を行うことをお勧めします。
・技術的各資格者一覧の提示を求めてください(一級建築士・一級施工管理士・マンション管理士・設備士・積算士・その他国家試験資格保持者等)。
以上のような方法で確認しましょう。
②経営的評価
マンションの改修は継続性が重要です。次の大規模修繕まできちんとしたアフターケアや技術サポートが可能な継続性のある会社を選ぶことが重要です。
日本のコンサルタント業界では、経営的に継続不可能な組織が増えています。経営が不安定では、対応も不誠実になるというものです。数年分の決算書や、第三者経営情報(各行政庁指名ランク・データバンク情報)の分析、確認をしっかり行うようにしてください。
マンション管理組合の立場から見ると、10年、20年というスパンで関わることを前提に、しっかりとした経営理念と安定性を持っていることが、コンサルタントの最低条件になります。
③相性の確認
コンサルタントには会社ごとにさまざまな特徴があります。それらの特徴と自分たちのマンションの特性の相性が合うかどうかも、コンサルタント選びの重要な要素となります。ともにいろいろな業務を実現していく過程で、お互いに効果的なコミュニケーションがとれなければ、良い工事はできません。「社長面談を行うとともに社長の経歴を精査する」「担当者との面談を行い、コミュニケーションをとって相性を判断する」といった方法で、相性のいいコンサルタントを選んでください。
④コンサルタントの費用
コンサルタントの選択において、コンサルタント費用は大切な要素ではありますが、安ければよいというものではありません。しっかりした技術や能力に対しては、基本的にその対価はきちんと払ったほうが、結果として全体コストの削減につながる場合が多いようです。
コンサルタント費用が工事全体に占める比率は小さなものです。多少コストが高くついても、良いコンサルタントを選ぶことを強くお勧めします。
規模にもよりますが、大規模修繕工事全体費用の3~5%程度のコンサルタント費用が必要と考えます。明らかにコンサルタント費用が低い場合は、何らかの問題がある可能性も否定できません。判断基準としては、「直接人件費・技術費・会社経費など見積書の内容が明確かどうか」「行政庁、設計量指針と比較して妥当かどうか」「工事費に対してのコンサルタント費用の比率が大きくなりすぎていないか」などが挙げられます。
事務所選定においては適正なコンサルタント費用を提示する事務所を選んでください。
⑤社会貢献
コンサルタント事務所は多くの社会的な使命を持っています。したがって、その社会的使命を果たすためにはさまざまな努力が必要です。
社会貢献活動・業界健全化活動・人材育成活動・技術高度化勉強会・災害防止活動などは、これからのコンサルタント事務所評価において大切な判断材料となると思われます。マンションにおいても社会的価値観の向上が重要であることと同じ視点です。