前回は、建材としての「コンクリート」の特徴を見ていきました。今回は、頑強な鉄筋コンクリートが「経年劣化」で内部崩壊する仕組みを説明します。

コンクリートという素材は「経年劣化」が避けられない

マンション建築を簡単に説明すると、その外側をつくるにあたっては合板でコンクリートの型を一層ごとにつくり(仮枠といいます)、そのなかにコンクリートを流し込むことから始めます。ただし、コンクリートだけでは引っ張られる力に対して弱くなってしまうので、強度を確保するために設計段階での定めに従って、鉄の細い棒(鉄筋)を事前に仮枠のなかに入れておきます。このように鉄筋が内部に入って固められたものが鉄筋コンクリートです。現在、ほとんどのマンションはこの工法でつくられています。

 

こうして鉄筋コンクリートで主要構造部分ができあがったあとに、美観を整えるために塗装やタイル貼りを施し、機能的には窓や配管を取り付け、なじみのあるマンションが完成するわけです。

 

つまり、マンションのベースは鉄筋コンクリートということ。その点がわかれば、建物を守るためには、コンクリートを守るというのが前提となることが理解できるはずです。

 

マンションは鉄筋コンクリートであり、その強度は非常に優れています。地震に強く、燃えません。多くのマンションが鉄筋コンクリート製であるのはまさにそれが理由です。

 

しかしながら、そんな鉄筋コンクリートにも弱点があります。それは「経年劣化」、時間とともに品質・性能が低下することです。それはコンクリートの素材の性質上、避けることができません。

コンクリートの中性化が進み、内部の鉄筋が腐食・膨張

先に触れたように、コンクリートの主成分は石灰石です。その特性のひとつにアルカリ性の強さがあります。つまり鉄筋コンクリートとは、アルカリ性が非常に強いコンクリートのなかに鉄筋が入っているものです。内部の鉄筋はアルカリ性に守られて錆びません。実はそれにより建物を支える強度が維持されているというのが、鉄筋コンクリートの強さの基本なのです。

 

コンクリートの寿命を測る尺度はいくつかあります。ただし、鉄筋コンクリート自体のアルカリ性が失われることが強度に及ぼす影響は非常に大きく、直接的にマンションの寿命にかかわる条件となっています。なぜでしょう。

 

それは、コンクリートの素材である石灰石のアルカリ性度は時間の経過とともに低下していくからです。その結果、コンクリートは中性化していきます。そこで発生するのが、内部の鉄筋の腐食です。鉄筋が錆びて膨張することで、ついには周辺のコンクリートを破壊してしまうのです。

 

これが一番顕著なコンクリートの弱点であり、建物崩壊のメカニズムと考えられています。つまり、コンクリートをいつまでもアルカリ性に保てれば、この崩壊のメカニズムは防げるのです。

本連載は、2017年12月18日刊行の書籍『改訂版 マンション管理組合理事になったら読む本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 マンション管理組合理事になったら読む本

改訂版 マンション管理組合理事になったら読む本

貴船 美彦

幻冬舎メディアコンサルティング

大規模修繕工事のタイミングは? コンサルタントはどうやって選ぶ? マンション理事を楽しむための秘訣が盛りだくさん! 自分たちが住む場所だからこそ、自分たちでよくしていきたい――。マンション理事と聞いて、堅苦しい…

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