「大規模修繕工事」は管理組合が計画的に行う一大事業
理事会にとって、主要な業務が建物の維持管理です。そのなかで「大規模修繕工事」は管理組合が計画的に行う一大事業です。一般的に10年から12年前後の間隔で実施されることが多くなっています。
しかし、大規模修繕工事は理事会の非常に大きな業務でありながら、その一方でさまざまな誤解や間違った情報が一人歩きしているのも事実です。
そこで本連載では、まず始めに細かい技術論ではなく、実際に大規模修繕工事を行う前にぜひ知っておきたい大切な事項について説明させていただくことにしました。
マンションは「石灰石」と「粘土」で構成されている!?
マンションの主要建材がコンクリートであることは多くの方がご存じかと思いますが、ではそのコンクリートとはどんなものかと聞かれると、答えに詰まってしまうのではないでしょうか。
ごく簡単に説明しますと、コンクリートとはポルトランドセメントに砂と小石を入れて水を加え攪拌したものです。主要成分であるポルトランドセメントの原料となっているのは石灰石など5種類ほどの物質ですが、そのすべてが均等に使われているわけではありません。これらの成分のなかで、石灰石と粘土が大部分を占めています。
そうすると実はマンションは石灰石と粘土で構成されている建物だとさえいえるのです。これらの材料が水により結合されて硬いコンクリートになっているのですが、その基本があまり知られていません。このことを覚えておくと、修繕工事などの機会にさまざまなポイントを理解する助けになるはずです。
コンクリートそのものは古代エジプト時代から存在していたという記録があります。その後の歴史のなかで、現在利用されているポルトランドセメントが開発されたのですが、それからでも200年以上の歴史がある非常に利便性の高い材料です。このコンクリートの内部に鉄筋を入れて強度を高めたものが、大部分のマンション建築に用いられている鉄筋コンクリート構造なのです。
コンクリートは多くの地域や歴史のなかで実証実験を繰り返し、少し大げさにいえば人類に共通した一種の〝財産〟として定着し、現在に至っています。その利用は広範囲に及び、鉄筋コンクリートが都市をつくっているといっても過言ではないのです。
逆のいい方をすると、世の中の技術進歩は目覚ましく、たとえば各種機械、コンピュータや電子機器、化学、食品、医療などの人類の生活に関係する多くは根本から変化し続けているにもかかわらず、建物の基本となるコンクリートの材料は何百年にもわたってほとんど変わっていません。
コンクリートとは非常に古臭い、代わり映えのしない基本材料です。しかしそれは、鉄筋コンクリートが人間の生活にとってすばらしい材料であり、工法であることの証です。簡単にいってしまえば、ほかに代替えのきくものがないほど、人間と相性が良い材料なのです。
とはいえ残念なことに、ほとんどの方は学校などでコンクリートについて教わった記憶はないでしょう。都市の大部分を形成し、その内部で私たちが生活しているのにもかかわらず、どのような物質でどのような性質を持っているかを知る機会は与えられていません。