カギとなるのは2018年の「アメリカ議会の中間選挙」
トランプ政権支持率は低下し、政権内部の混乱ぶりも収まる気配を見せない。しかし、こうした状況にもかかわらず、NYダウは2017年8月8日に2万2179ドルと史上最高値を更新した。この背景には好業績に加え、年間5000億ドルを超える自社株買いの存在があろう。
その後、北朝鮮情勢の緊迫化などを背景に反落したが、9月12日には2万2134ドルと再度、高値追いの展開に転じた。11月21日には2万3617ドルまで上昇、そして同月30日に2万4327ドルと、2万4000ドルの大台に乗せた。
アメリカ大統領選前日(2016年11月7日)の終値は1万8259ドルであり、この間、実に3割以上上昇したことになる。ちなみに、同期間における日経平均株価の上昇率も32・3%に達している(1万7177円→2万2724円)。ただし、ドルベースではほぼ同率の上昇率である。
政治不安が高まるなか、NYダウは何を根拠に最高値を更新し続けているのだろうか。もちろん、アメリカの実体経済がおおむね好調なことは知られているが、カギとなるのは、2018年に行なわれるアメリカ議会の中間選挙を意識した動きだろう。
政権与党の共和党は、トランプ大統領の不人気、議会の混乱によって中間選挙で議席を大きく減らしかねない。それを防ぐためには、予算など懸案事項を早期に解決し、トランプ大統領の公約である法人税率の引き下げの実現を急ぎ、失地回復に努めるという図式である。
与党共和党は、法人税率を現行の35%から20%まで引き下げる案を考えていた。トランプ大統領は、「理想は15%」と演説していたが、代替財源の確保が困難なため、結局引き下げ幅は抑えられ、21%となった。
法人税の減税は2018年1月1日にさかのぼって実施される。アメリカの法人税率引き下げは約30年ぶりのことであり、その実現をマーケットは好感した。
「森を見ず、木を見よ!」の投資戦術とは?
これに加えて、もう1つ注目されている減税の内容に、企業の海外資産を国内に還流させる「レパトリ減税」がある。ちなみに、ブッシュ政権下の2005年に実施されたレパトリ減税では、1月17日の1ドル=101円69銭が12月5日には121円40銭と大幅な円安になった。この再現が期待できる。
[図表]レパトリ減税が実施された2005年の相場
法人税率の引き下げにレパトリ減税が加われば、インフラ投資、企業の設備投資が加速化する。そうなれば、企業業績がさらに上向き、GDP(国内総生産)成長率の押し上げにつながる。
NY市場の足元の堅調ぶりを支えているのは、こうした減税策によって企業業績の上振れ余地が大きくなる、との見方(期待感)が強いからに他ならない。
しかし、NY市場はときに「かんしゃく」(急落相場)を起こすだろう。為替は北朝鮮情勢にもよるが、リスク・オフの場合は一時的に円高(1ドル=105円前後)が進行する可能性がある。そうなれば、東京市場も無傷では済まない。もちろん、そんなところは断固、買いになる。
筆者は2017年の春以降、夏場にかけてNY市場、東京市場ともに早晩、〝高値しぐれ〟の様相を強める、と主張してきた。したがって、この局面は「森を見ず、木を見よ!」の投資戦術が不可欠だ、と。
そう、2018年も基本的には各論(銘柄)勝負になろう。