今回は、人間心理を読む「発想力」を養う方法を見ていきます。※本連載は、元警部である森透匡氏の著書『元刑事が教えるウソと心理の見抜き方』(明日香出版社)から一部を抜粋し、ウソや人間心理を見抜くテクニックを紹介します。

恐妻家サラリーマンが届け出た「オヤジ狩り被害」の例

目の前にいない犯人の心理を読むときに基準となるのは、「普通はこんな行動をとるだろう」という人間の行動原理と一般的な常識です。実はこれ、推理をする刑事の社会経験や人生経験で変わってしまうことがあります。

 

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それを物語るこんな事件がありました。私が警察署で当直勤務についていたときのことです。

 

酔っ払いのサラリーマンから110番通報があり、「帰宅途中にオヤジ狩り(強盗)の被害に遭った」と届け出がありました。そのサラリーマンは若い男に因縁をつけられて殴られた上、財布だけを強奪されたと供述しました。

 

しかし、自分で転倒して怪我をしたのにウソを言っているのではないか、という疑いが浮上しました。

 

それは話の節々に「うちは恐妻家である」ということを漏らしていたからです。奥さんの手前、転んで怪我をしたとも言えず、とっさに虚偽の被害申告をしたのではないかという疑念が出てきたのです。

 

そして奪われたという「財布」の中には、現金がほとんど入っておらず、上着のポケットやズボンのポケットに札と小銭がバラバラに入っていたと言います。

 

被害者の供述によると、居酒屋をひとりで数軒はしごして、その支払いの度に万円札や五千円札を出したのですが、釣りの札と小銭は財布に入れず、その都度、上着やズボンのポケットに入れたらしいのです。

 

そこで酒を一滴も飲まないA主任が疑問を口にしました。

 

「釣りを貰ったら、財布に入れるのが普通じゃないのか?」

「なぜ上着やズボンのポケットに入れる必要があるのか?」

 

おわかりだと思いますが、これは酒を飲まないA主任の常識に照らし合わせての疑問でした。

「自分の常識」で相手の心理を読むと、誤る可能性が・・・

酒を飲む人ならわかるはずですが、特に泥酔しているといちいち財布に入れるのも面倒になり、釣りを上着やズボンのポケットに入れることがあります。数日後に「あれ、こんなところに千円が」と忘れたころに出てきて喜ぶことってありますよね。酔っ払いの常識としては当たり前ですが、酒を飲まない人からすると不思議なのでしょう。

 

私はA主任の疑問に異を唱え、酔っ払いの通常の行動、心理について解説してあげました。A主任は「そんなもんなのか」と納得していましたが・・・。

 

つまり、自分の常識で相手の心理を読むと誤る可能性があるということです。結果的にこの男性は本当に強盗被害に遭っており、後日、現場近くに住む不良が逮捕されました。男性の供述はウソではなかったのです。

 

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そういった意味で刑事は日頃からいろんなことに興味を持ち、いろんな体験をすることで発想力を育て、常識的な判断力を身につけることが必要となります。

 

警察の社会では、新人刑事は先輩刑事から「いろんな経験をしろ」と教えられます。パチンコ、競馬、競輪などのギャンブル、それからスナック、キャバクラなどの風俗営業店、もちろん合法的にですが「飲む、打つ、買うは一通りやってみろ」と言われるのです。体験が常識を変え、発想力を養うというわけです。

元刑事が教える ウソと心理の見抜き方

元刑事が教える ウソと心理の見抜き方

森 透匡

明日香出版社

警察官として約28年、うち知能・経済班担当の刑事を約20年務めた著者が、その経験の中から生み出した「ウソや人間心理の見抜き方」を公開。 相手がウソをついたときのサインの見方や、ウソつきかどうかを見極める質問の仕方が…

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