前回は、顧問税理士からの提案が「最適ではなかった」事例を取り上げました。今回は、富裕層を相手にビジネスをする、金融機関等が持つ問題点を見ていきましょう。

日本の資産家は、富裕層ビジネスの格好のターゲット

世界有数の人数と資産規模を誇る日本の資産家は、富裕層ビジネスの顧客としては格好のターゲットです。カード会社のゴールドカードやブラックカード、高級ホテルのエグゼクティブフロア、豪華寝台列車でのトレイン・クルーズなど、様々な商品とサービスが登場しています。

 

証券会社や銀行など金融機関も同じで、資産家向けの金融商品や生命保険、あるいは事業承継のためのコンサルティングサービスなどを提供しています。日本の場合、資産家に占める地主の割合が高いため、アパートや賃貸マンションによる土地の有効活用なども富裕層ビジネスのひとつといっていいでしょう。

 

しかし、先述のとおり、資産家を取り巻く状況は刻々と厳しくなっています。「どうしたらいいのか教えてほしい」「誰かに相談したい」と思われるのは当然です。

 

ところが、相談する相手である金融機関などには大きな問題があります。各社とも自社の得意な分野や自社が扱っている商品、サービスに顧客である資産家を誘導しがちだということです。その姿勢や構図は、今後もすぐ変わるとは考えられません。

金融機関が富裕層にすすめていた「仕組債」の例

たとえば、リーマンショック前、銀行が資産10億円を超えるような中小企業オーナーや地主系の資産家に盛んにすすめていたのが、デリバティブを活用した「仕組債」という商品です。いまも国内外の証券会社やプライベートバンクと呼ばれる金融機関が積極的に販売しています。

 

特に1週間程度の短期のデリバティブ商品は、次々に乗り換えていくことで年間100%以上の利益が期待できるなどのセールストークで売られています。

 

しかし、内容が複雑で理解しにくい上、表面上の説明とは異なり、発行元の利ザヤは元本の30〜40%に達することもあります。さらに、それを販売する銀行などへは紹介料として販売価格の5〜10%が支払われるのが一般的です。

本連載は、2016年5月25日刊行の書籍『資産防衛の新常識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産防衛の新常識

資産防衛の新常識

江幡 吉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の増税、マイナンバー制度や出国税の導入など、資産家を取り巻く状況が年々厳しさを増していくなか、銀行や証券会社が販売手数料を目当てに、「資産防衛のサポート」と称して富裕層に群がっている現状…。資産家が金融営…

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