法的な確認をしないで、素人判断のみで進めるのは危険
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Q:手掛けるビジネスの構想が固まった段階で、法的に問題がないか専門家のチェックを受けたほうがいいでしょうか?
A:業種・業態によって許認可申請が必要な場合があるので要注意
ビジネスモデルの構想が固まってきたら、許認可が関わる事業かどうかといった法的な視点でのチェックが必要です。
日々多くの起業相談を受けていると、これまでなかったような画期的なビジネスモデルと出会うことがあります。そんなときは筆者も非常に興奮しますし、この構想を実現するためにはどうすればいいか、起業支援の専門家としての能力をフルに発揮してアドバイスしています。
具体的な準備を先に進める前に、必ず行政書士などの専門家への相談・確認をしておきましょう。法的な確認をしないまま素人判断だけで進めてはいけません。
これは、知らない間にあなたが法を犯さないためです。後々ムダな時間やお金をかけるのを避けるため、それが原因で起業に失敗しないためでもあります(相談を受けた結果、法的に問題がないビジネスモデルへと調整が可能な場合もよくあることです)。
許認可や資格の取得が必要かどうかを専門家に相談・確認しましょう。特に創業融資の借入を希望している場合、ビジネスモデルとして許認可や資格が必要かどうか、それをきちんと取得しているかどうかが必ずチェックされます。
許認可申請の際に注意したい「6つ」のポイントとは?
以下、許認可に関連して注意したいポイントを6つ説明します。
1 定款の事業目的
許認可が必要な事業を行なうときは、「定款(ていかん)」のなかの「事業目的」に許認可に適した目的を入れる必要があります。
「定款」とは、簡単に言うと会社の基本的なルールを決めた文書で、会社を設立するときに作成することが必須とされています。
定款のなかの重要項目のひとつが「事業目的」です。事業目的には、会社が行なう事業内容を列挙し、会社はそこに記載した項目の範囲内でのみ活動することができます(図表参照)。許認可を受ける必要があるビジネスの場合、事業目的にそのビジネスが記載されていないと許認可が受けられません。つまり、会社設立の手続きに入る前に、許認可についても調べておく必要があるのです。十分に注意してください!
なお、個人事業の場合は定款が不要なため、このことは気にしなくてもOKです。
2 本店所在地、事業所
許認可によっては、本店所在地や事業所についての要件が厳しく定められているものがあります。たとえば、面積、入口から面談スペースまでの導線やプライバシーへの配慮などです。自宅やバーチャルオフィスを本店所在地にしようと考えている場合、特に確認が必要です。条件に合ったオフィスを賃貸する方向へ方針変更が必要かもしれません。
3 資本金
許認可によっては、最低限必要な資本金額が決まっているものがあります。会社設立前に確認しましょう。
4 人事労務
自分が必要な資格をもっていない場合、または資格をもった人の数を揃えることが要件になっている場合、以下の対策を検討する必要があります。
●時間をかけて資格取得をする
●資格をもった人を役員や従業員として迎える
●ビジネスのうち資格が必要な部分を切り分け、資格をもつ外部業者と連携する
5 収益性
前述の条件に合った事業所をもつ必要がある場合、資格をもつ人を雇用する必要がある場合などでは、ビジネスの収益性そのものに影響を与える可能性もあります。
6 財務
意外と盲点なのが許認可による資金繰りへの影響です。とりわけ創業融資を前提としている場合、許認可がおりた時点で融資実行というのが通常。そこまで、資金繰りがもつかどうか、自己資金額を決める際に十分な検討が必要なのです。特に不動産業や介護事業など、許認可がおりるまでに長い時間(3〜6か月程度)がかかるビジネスでは注意してください。
[図表]許認可の代表的なものと「事業目的」の記載例