世界各国の株式を買っても、リスク分散にはならない!?
資産運用の手段は今や多岐にわたります。国内外の株式や債券、新興国ファンド等から、不動産や金などの現物、FX(外国為替証拠金取引)や先物取引、ビットコインなどの仮想通貨に至るまで、世の中には実にさまざまな投資対象、そして金融商品があります。
よく知られる投資の格言「卵は1つのカゴに盛るな」にならえば、これらに万遍なく資金を投じて運用するのが、最もリスク分散が図れる安全な投資法といえるでしょう。しかし、分散しすぎると、リターンは低くなりがちです。日本株が上がれば、日本国債が売られるのが常ですし、米ドルが買われて価値が上がるときには、日本円の価値は下がってしまいます。分散するほど、ある金融商品で得られたリターンは他の商品で相殺されてしまうものなのです。
それぞれの金融商品にはいくつもの落とし穴がある点にも注意が必要です。
ご存じのように、株式投資は高いリターンを望める反面、下落リスクがつきまといます。
おまけに、世界のマーケットは連動しており、「アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひく」という格言はよく知られたものです。2015年にギリシャ危機、チャイナショックが続き、金融市場における〝非主要国〞の金融不安が世界に波及して、投資を冷え込ませたことは記憶に新しいでしょう。少なくとも、さまざまな国の株式を買ったところで真のリスク分散にはならないわけです。
マイナス金利政策の下、日本国債の利回りは低いまま
一方で、日本の国債はマイナス金利政策の下、異常に低い利回りのままです。現在、テーパリング(量的緩和の縮小)への期待も高まっていますが、同じくマイナス金利政策を導入している欧州も国債利回りは低い状況にあります。唯一、先進国ではいち早く量的緩和を終了したアメリカの10年債利回りは2%を超えており、FRB(米連邦準備制度理事会)はさらなる利上げを示唆していますが、アメリカの金利上昇は新興国投資を冷え込ませる可能性があります。新興国からお金を引き上げて、金利上昇が見込まれるアメリカに資金を移す投資家が増えると予想されているからです。
アメリカの金利が上昇を続けるならば、新興国の国債は売られ続け、より高い金利を設定しないと資金調達ができなくなってしまい、最悪2001年のアルゼンチンのようにデフォルトに陥る可能性もなきにしもあらずです。低リスクであるはずの国債による分散投資でも、投じた資金がゼロになる事態が起こり得るのです。
FXや先物取引の価格変動リスクの高さは、もはや触れずともご存じでしょう。さらにビットコインなどの仮想通貨投資になると、1日のボラティリティ(変動率)が時に10%を超えることもあり、これは完全に〝投機商品〞です。昨今、「金」の現物投資も活発ですが、金そのものは金利を生みません。「有事の金」と称されるように「金」は資産運用商品ではなく資産防衛商品なのです。