中小企業の財務状況を左右する「経営的経理」という存在

今回は、中小企業の財務状況を左右する「経営的経理」という存在について見ていきます。※本連載では、有限会社竹橋経営コンサルティング取締役社長、古尾谷 未央氏の著書『借りない資金繰り』(同友館)の中から一部を抜粋し、「借りない資金繰り」のポイントを分かりやすく解説します。

「資金」と「企業の将来」を考えるのが経理の仕事

企業は赤字では倒産しませんが,資金が枯渇すると企業活動を継続することができません。また,成り行きで経営していては,借入金がどんどん増えていき資金繰りは悪化します。このため,常に先を見て数字で管理することが大切です。こういった点を改善するには,社長だけでは不十分で,経理の力が必要となります。

 

経営は先を見ていくことが重要となります。先が見えていれば,社長や幹部はやるべきことが明確になり,社内に対し的確な指示ができ,改善が進められます。そして社長も安心して仕事に専念できるようになります。このため,来月,再来月の資金繰りが分かることは元より,半年先や1年先まで見えると,今から色々な対策ができ,楽に経営ができるようになるのです。

 

また,財務体質を改善させて,資金がもっと効率的に回るような体制を作っていくことも重要です。成り行きでは,資金繰りは常に悪化していきます。それは,営業や生産部門の社員達は,資金に対する意識があまり無いからです。つまり,販売部門は販売に一所懸命で回収にはルーズであり,製造部門は納期を重視するあまり欠品を恐れて余分に仕入れるなど,社員自身がミス無く楽にできるようにしてしまうからです。これでは,財務体質や資金繰りは悪化するだけです。

 

このような状況を改善するには,社長がまず資金の重要性について本気になって考え,経理の意識から変えていく必要があります。中小企業では,経理は「税理士の下請け」として決算書作成をメイン業務としており,ここを変えていくのです。まず,資金と企業の将来を考えるのが経理の仕事だと認識させ,そして経理が工場や営業など組織を横断的に統率していく体制をつくる必要があります。これこそ,「社長の下請け」としての本来の経理の役割です。決して税務署や税理士のために経理がいるのではありません。

 

[図表]

経理に必要なのは「資金繰りを改善させる」という意識

中小企業の資金繰りは,大きな仕入があり支払いが先行すること,売掛金の回収遅れや売上が落ち込む月があるなどで,年間を通して安定推移することはまずあり得ません。収入は毎月不安定なのに,固定費や借入の返済は一定してあるのが一般的です。経理はこの不安定な資金繰りを改善させるという意識を常に持ち,資金繰り計画を作ることが求められます。つまり,経理が資金を重視して企業全体を見て管理できるようになり,各部門に対し発言力を持たなければならないのです。

 

試算表の作成スピードも,“経営的経理”がいる企業は違います。一般的な中小企業では翌月の末頃に試算表が出来ます。また,社長が試算表の重要性を認識していない場合,どんどん後ろにずれ込み,2か月後になってしまうこともあります。しかし,経営的経理がいる企業では,1週間以内に作成します。この違いは何でしょうか。これは,結果を早く知ることの重要性を知っているか否かです。経営はいかに早く軌道修正できるかにかかっています。業績の良い企業は売上や粗利を見て常に軌道修正し,それを社員にしっかりと落とし込んでいます。試算表作成の実務的な面で1つポイントを挙げるとしたら,仕入計上に大きな違いがあります。相手先から来る請求書を待って仕入計上していては,処理は相手次第ということになって,スピーディーな作成ができません。経営的経理がいる企業では,仕入の請求書では無く,納品書で仕入計上をしています。仕入の都度毎回この納品書の金額と数量を確認して仕入計上すれば,処理が正確となり最後に来る請求書は確認になるだけです。この流れを作れば,仕入・在庫の管理体制が強化でき,ミスも予防できて粗利改善にもつながります。実はここが収益の源泉でもあるのです。

 

また,金融機関に企業を理解してもらうためには,社長だけでなく経理が重要な役割を果たします。経営的経理は,試算表など過去の数字の説明がしっかりでき,また資金繰りの予定を明示できるからです。金融機関は,社長の話だけでは数字面で理解ができないこともあります。その時に経理がしっかり説明できると金融機関の評価も大幅に上がるのです。そのためにも,経理には常に先を読み,資金計画を立て企業の各部署を巻き込んで管理していく力が求められるのです。金融機関に企業のことを理解してもらうことは,経理の重要な仕事の1つと言えます。

有限会社竹橋経営コンサルティング 取締役社長

大学卒業後、中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)へ入庫。10年の在籍で融資、審査、事業再生、債権管理など中小企業金融に関する幅広い業務を経験。その後、(財)日本生産性本部を経て、元上司の支店長とともに中小企業向けのコンサルティング会社を設立。(有)竹橋経営コンサルティング取締役社長。“重視するのは拡大より継続”を理念とし、B/S改善・AI資金シミュレーション「ICAROS‐V」を活用したコンサルティングを中小企業向けに展開して10年の実績を持つ。人工知能を搭載したICAROS‐Vによる「借入金の削減」や「リスケジュールの解消」は金融機関からも定評がある。

著者紹介

連載中小企業オーナーのための「借りない資金繰り」実践講座

 

借りない資金繰り

借りない資金繰り

古尾谷 未央

同友館

重視するのは拡大より継続。資金繰り計画の作成により、金融機関頼みの現状から脱却し、自立した永続企業に生まれ変わる!

 

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