今回は、資金繰り計画に「企業維持費」を加えるべき理由を見ていきます。※本連載では、有限会社竹橋経営コンサルティング取締役社長、古尾谷 未央氏の著書『借りない資金繰り』(同友館)の中から一部を抜粋し、「借りない資金繰り」のポイントを分かりやすく解説します。

中長期的な視点で投資計画ができる企業は多くない

企業が存続していくためには,継続的に設備の維持・補修の投資が必要となります。これを“企業維持費”といいます。企業維持費は,①更新投資と②増強投資に分かれますが,まず決算書の減価償却費を1つの目安にして投資計画を立てることが重要です。例えば年間20百万円の減価償却をしている場合は,年間その程度の投資が設備を維持するために必要となるのです。しかし,資金繰り計画ではその投資計画が入っていない企業が大半です。

 

[図表]企業維持費の算出

 

中には,機械は壊れてから投資するといった無計画な企業もあります。投資を中長期的な視点に立って計画できている企業はあまり多くありません。そこで,まず更新投資についてB/Sと資金繰りから見ていく必要があるのです。更新投資をしない場合,例えば小売りの店舗などは設備の劣化から売上の低下につながる可能性も多いにあります。自社の設備は見慣れてしまって気づいていない可能性があるので,外部の人間にアドバイスをもらうことも有効です。定期的に投資を計画し,企業の設備等を良くしていくことは,売上の維持向上になるとともに,社員のモチベーションアップに間違いなく直結します。

 

資金繰りが厳しい企業の場合,どうしても設備投資へ資金を回せないこともあります。しかしこれが悪循環となり,さらなる売上ダウンにつながってしまうため,まずはここの対策を打つことが重要です。業績が厳しい企業の場合,更新投資をすることが改善のきっかけになることも多くあります。現場の状況と社員などを見て,必要だと判断したら資金繰り計画に落として問題ないかシミュレーションします。ここから企業全体の意識がアップして改善につながることも多いのです。

資金繰り計画で「投資効果が出てくる時期」を予測

また,設備の増強投資は,今後5年程度でどれくらい設備を増強するのかを検討し,来年1年間にどれくらい投資を行うかを決めていきます。その際,必ず自社のB/Sを見て,投資が必要とされているのかを判断します。次に資金繰り計画では,1年ごとに投資額を経常外収支に織り込み,資金繰り計画を作成するようにしていきます。

 

多くの中小企業ではこういったビジョンが無く,いざ投資するとなったら借入をすればいいと考えてしまいがちです。これでは強固な財務を作っていくことはできません。単年度で資金が残った,利益が出たと喜ぶことにはあまり意味が無く,多少の利益が出ても企業維持費を考えると,そのまま使えるお金ではないことが分かります。このような考えで資金繰り計画を作っていくことで,企業の財務体質を強化していくことが出来るのです。

 

資金繰り計画では,経常外支出で投資額を入れ,その資金調達の方法を確認するとともに,投資効果が出てくる時期を予測します。大抵,売上や付加価値のアップは計画より後ろにずれ込みます。そのため,収入のアップは一層固めに見る必要があるのです。そして固定費のアップ,さらには投資分の借入返済などを織り込んで資金繰り計画を作成します。一般的には固定費も予想以上に膨れるため,厳しい見通しになることも多くあります。

 

さらに,投資の資金調達については,全額借入でまかなうような計画ではだめです。やはり自己資金が30%程度は必要であり,現状の資金ポジションから30%程度を使っても運転資金等で支障が出ないかどうかが,「投資効果の判断」に加え,現状での「投資の妥当性」を判断する基準となります。そこまで自己資金が無い企業の増強投資は,時期尚早と言えるでしょう。

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