今回は、クリニック開業をサポートしてくれる外部専門家を探す際に、押さえておくべき「5つのポイント」について見ていきます。

「開業コンサルタント」の中には悪質な人たちもいる!?

クリニック開業を手伝ってくれる専門家を探すためには、どうすればよいのでしょうか。インターネットのサイトを閲覧すれば、「クリニック開業を全面的にサポートします」と謳っているコンサルタントは数多く存在します。その中から、十分な選考をすることなく、「とりあえず話を聞いてみようか」と思われるドクターもいらっしゃることと思います。

 

しかし、開業コンサルタントと呼ばれる人の中には、信頼するに足らない人たちも見受けられます。そうした悪質なコンサルタントの被害にあわないよう、またきめ細かな上質のサービスを受けられるよう、開業をサポートしてくれる専門家を探す際には、以下のような点に留意してください。

 

①実績の有無をチェックする

開業コンサルタントと称していながらも、開業をサポートした実績がほとんどない場合には、当然のことながら、開業に関する十分な知識やノウハウを持ち合わせていないはずです。実際、開業をサポートした件数が数えるほどに過ぎないにもかかわらず、さも自分は開業のエキスパートであると謳っているコンサルタントもいるようです。

 

やはり、少なくとも100件以上の実績を持っているコンサルタントを選びたいものです。ある程度の実績と経験年数を有しており、先輩や友人のドクターが、その開業時に実際にサポートを受けたコンサルタントで、「フォローが行き届いており、すごく良かったよ」と推薦してくれるようであれば、信頼して任せることができるでしょう。

 

②サイトだけで判断しない

インターネットのサイトというのは、作り方次第で、実際よりもスケールを大きく見せたり、さもエキスパートであるかのように見せたりすることが可能です。言い換えれば、ハッタリが利くともいえるでしょう。ですから、サイトを文面通りに信用することはせず、実際に相手に会って、サポート内容を吟味した上で判断するべきです。

 

その場合も、時間が許すのであれば、最低でも2~3人のコンサルタントに会って話を聞いてみることをお勧めします。1時間も話を聞けば、相手の懐の深さも伝わるでしょうし、逆にメッキも剥がれます。また、知識経験面だけではなく、その人と自分の波長が合うか否かということも忘れてはなりません。

 

やはり開業というのは、一朝一夕で成るものではないので、ペースやスタイル、価値観が合わないのであれば、絶対にうまくいきません。こうした点も含めて、選定されることをお勧めします。

 

③サポート費用とその内容が曖昧なケースはNG

開業コンサルタントの中には、最初から、明確にサポート費用を提示しない人もいます。また開業までのフローチャートの説明がなかったり、サポート内容について曖昧なケースもあります。こうした場合には、後から法外なサポート費用を請求されたり、サポート半ばで放置されてしまうことも考えられます。

 

ファジーで良いこととそうでないことがあるわけですが、開業コンサルタントを選ぶにあたって、この2点は重要ですので最初にしっかりと確認することが大切です。反対に、はっきり提示してもらえない場合はサポートをしてもらうべきではありません。

 

なお、開業準備期間においては、ドクターは勤務医であるわけですから、時間的な制約が少なくありません。ミーティングにあたっても、柔軟な時間設定に応じてくれる専門家を選ばないとスムーズに進行しません。夜や土曜日、日曜日、祝日はNGということであれば、その相手と円滑なコミュニケーションをはかることは困難でしょう。こうした点についても、最初に確認されることをお勧めします。

 

④スタッフ採用もサポートできるのかを確認する

オープニングスタッフの採用については数多くの注意点があり、かつウエイトも大きく、重要な部分です。求人面接ひとつとってもおわかりのように、スタッフ採用というのは、段取りから実施、選考、雇用契約に至るまで大変なエネルギーが必要となります。

 

したがって、スタッフ採用においても積極的にサポートしてくれる専門家に依頼することが望ましいでしょう。スタッフの求人面接は、ドクター自身が勤務医である期間に行わなければならないため、通常は、土曜日や日曜日、祝日に実施することになります。

 

中には、休日まで手取り足取りサポートしてもらえないケースもあるかもしれません。しかしながら、繰り返しますが、スタッフ選考は、開業準備の中でも、かなり重要性の高い事項のひとつです。面倒がらずに、二人三脚で手伝ってくれる人を選ぶことが、最終的には良いスタッフの確保、果てはクリニックの成功につながることを忘れてはなりません。

開業後も忙しい院長に代わってチェックをしてくれるか

⑤開業後のフォローもしてくれる

「開業してしまえば、それでおしまい」というのではなく、開業後のフォローやメンテナンスまでしてくれるのかどうかということも、コンサルタント選定にあたっての大きな判断材料となります。

 

例えば、クリニックのオープン後、1カ月ぐらい経過した時点で訪問してみると、待合室に長い髪の毛が数本落ちたままになっていたり、トイレの掃除が行き届いていなかったり、あるいは、患者用のスリッパが汚れたままとなっていたりすることがあります。通院する患者の立場からすれば、決して目にして気持ちのよい光景ではありません。

 

しかしながら、院長自身は診察室での診療が忙しく、なかなか診察室以外にまで目が行き届かないため、これらが放置されたままの状態となっているのです(気がつかないスタッフを雇ってしまったことにも問題があるのですが・・・)。

 

こうしたケースでも、サポートしてくれた専門家が開業後に訪問して、院長に代わって隅々まで行き届かない箇所がないかをチェックをしてくれたり、また、問題があった場合にはその改善策をアドバイスしてくれるのであれば、とても安心できるため、何かと心強いはずです。

 

ちなみに私の場合は、開業後のフォローの一環として、必要に応じて覆面調査を行っています。ここでいう必要に応じてというのは、開業後の来院数が伸び悩んでいるようなケースです。

 

開業後において、シミュレーション通りに患者が来ないような場合には、雇用しているスタッフに問題があることが少なくありません。そこで、「患者数が伸び悩んでいる」という相談を受けた場合には、面の割れていない所員もしくはその家族を患者として受診させ(実際には健診やスケーリングといったメンテナンスとして受診)、スタッフの仕事ぶりや接遇の様子などをチェックさせるのです。

 

その結果、「電話応対が悪かった」「受付の感じが悪かった」「とにかく会計が遅くひどく待たされた」「歯ブラシをしつこく勧められた」などといった事実が判明することがあります。こうしたクリニックの問題点をチェックして院長に報告し、スタッフには覆面調査の事実を伝えることなく、抜本的な改善に着手するのです。

本連載は、2016年4月刊行の書籍『改訂版 クリニック開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 クリニック開業読本

改訂版 クリニック開業読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

2000年から2015年の医療機関の倒産件数は527件。経営破綻した医科・歯科クリニックの8割は破産を選択せざる得なく、再起も難しい状況です。このような厳しい状況の中でも集患に成功しているクリニックが存在するのはなぜでしょ…

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