可処分所得が低く、人口も少ないスリランカだが・・・
多くのスタートアップは失敗するが、その困難な時期を生き残った企業も、スリランカの厳しい経済状況に制限されることになる。スリランカは可処分所得が低く、また人口も少ない。しかし、それはスタートアップにとって機会が限られていることを意味するものではない。
テクノロジーを活用し業界に新しい効率的な方法を導入している企業や、海外の消費者をターゲットにする企業は、他と比べ成功している。これらのテクノロジーに精通したニューエコノミービジネスは急速に成長しており、従来の起業を支えてきた銀行が率いるシステムでは、そのニーズを満たすことができない。
急成長を遂げているこれらのスタートアップは、最悪の場合、地元だけのITバブルに終わり、多くの失望を残す。しかし上手くいけば、世界的に競争力のあるニューエコノミー企業の数が相当量増え、従業員、株主、国に利益がもたらされる可能性がある。
起業家が相互援助する「非公式ネットワーク」が重要に
数年前、SLASSCOM、BPOの傘下組織、そして起業家を含む一部の投資家は、スタートアップ・エコシステムを構築するために組織化を開始した。スタートアップにとって資金調達手段、才能、アイディアなどの側面は重要だが、起業家がエコシステムの成功のために互いに助け合う非公式のネットワークがあることも重要だ。すでに成功しているスタートアップがある多くの都市では、ネットワークやエコシステムが道を切り開いている。
創業者は若者が多く、チャンスを見つけたり、資金調達をしたりした経験がほとんどない。エコシステムが多くの活動を行い周知されない限り、起業家はその存在に気がつかない。スタートアップにとってエコシステムは、ビジネスモデルや技術に関して助言をくれる経験豊富な起業家へのアクセスや、採用に関する場だ。時には、若い起業家には尊敬する人からの励ましの言葉が必要だ。
5年ほど前の設立以来、スリランカの非公式なネットワークは急速に成熟している。Lanka Angel Network(LAN)と呼ばれるスタートアップ投資家のグループは、コンペの企画、コーディングの勉強会、シード資金の提供を開始した。
LAN設立以降、非公式ネットワークはエコシステムに進化している。未公開株式投資会社を含む多くの個人および企業は、様々な段階でスタートアップに資金を提供する。
しかしLANの初期の支援者であるJeevan Gnanam氏は、スタートアップ・エコシステムは現在の4つの基本的な要素(競争、指導、資金調達、インキュベーター)を超えて進化する必要があると述べている。スリランカのアクセラレータやインキュベータは、多くの場合、株式のリターンとして限られた期間に特定のスタートアップの育成に重点を置いている。
エコシステムは5年前に比べ、大きく進化してきた。Gnanam氏を含むグループの先駆的な仕事は、スタートアップを5年前よりもはるかに一般的にし、いくつかの素晴らしいサクセスストーリーを生み出した。しかし、エコシステムは進化したものの、過去と同じペースで成長するには多くの足りない部分があるとGnanam氏は主張している。
スタートアップは通常、自らのキャッシュフローに依存するだけの独立性を得たり、買収されたり、もしくは株式公開を行うまでに、資金調達を何度も行う。LANは、事業がアイディアの段階か初期のプロトタイプを開発した段階でスタートアップに投資する。初期段階で失敗する確率は高く、一部の投資家は顧客をすでに持つスタートアップの確実性を好む。
「私たちはエコシステム全体をマッピングしているので、新規参入者がどの位置にいるのかを把握するのは簡単だ。エコシステム全体をマッピングして重複を最小限に抑え、チャンスを特定しやすくする必要がある」とGnanam氏は述べる。
第1段階の投資家は、アイディアに投資をする人だ。第2段階は、初期のプロトタイプができた段階。第3段階以降は、すでに顧客がついており製品に実績があるが、市場シェアを伸ばすために多額の資金が必要となる。第4段階以降の投資家たちは、ビジネスが拡大した後に、大企業に売却したり、株式を上場したりすることで、エグジットを目指す。