不動産価格を決めるのは「売主」と「相場」
購入時の価格がより安いほうが利回りは高くなり、効率の良い投資ができます。不動産価格を決めるのは、売りたい人、つまり売主と相場です。
新築であれば、デベロッパー(開発業者)が土地を仕入れて、マンションを建てて販売します。販売価格には土地代と建築費に、販売会社が自社の利益を上乗せします。これが大雑把な価格の決め方です。
一方で中古物件の場合は、売主が不動産仲介会社の査定を参考に販売価格を決めていきます。売主に依頼された不動産仲介会社は主に次のような項目で査定します。
〈中古物件の価格の査定要素〉
同じマンションの販売実績 最寄り駅からの距離
マンションの周辺環境 築年数 適正賃料
お住まい探しの場合、このうち最も参考にするのは、同じマンションの販売実績です。物件によってある程度の違いは出ますが、過去の実績をベースに専有面積、部屋向き、階数などの条件によって調整すればおおよその価格設定ができます。
投資用不動産の場合は、その物件をどのくらいの家賃で貸し出しできるかが大きな要素になりますから、販売価格には、マンション内の家賃設定も参考にします。仮に毎月の家賃が7万円で物件価格を2400万円に設定した場合、表面利回りは7万円×12カ月÷2400万円で3.5%となります。
築年数にもよりますが中古物件で表面利回りが3.5%では、買主にとってあまり魅力を感じられないでしょう。管理費や修繕積立金がかかりますので、実質利回りになるとさらに下がってしまいます。利回りが低い場合には販売価格を下げるか、事前にリフォームなどをして家賃のアップができるような工夫を、売主側がすることもあるのです。
売主によっては複数の不動産仲介会社に依頼して、もっとも高い査定価格を提示した仲介会社に売却を依頼するケースもあります。必ずしもその販売価格で売れるとは限りませんが、売主にしてみれば、少しでも査定が高い不動産仲介会社に依頼したいと考えるのでしょう。
さらに売主がいつまでに物件を売却したいかによっても販売価格は変わります。急いで売却する必要がない場合には、多少高めにして様子を見ることもあります。一方、売却を急いでいる場合には、買手を見つけるため、最初から叩かれた価格で売り出すことになります。
経済全体の動きも「価格」を大きく左右する
このように売りたい人と買いたい人の希望、つまり需給バランスによって決まる販売価格ですが、不動産価格は日本経済や世界経済全体の動きにも大きく左右されます。
たとえば、1980年代後半からのバブル期には、不動産価格が一気に高騰しました。不動産を購入して、しばらく寝かせておくだけで価格が上がり、売却すれば利益が確保できる状態で、家賃収入による利回りなど考える必要はありませんでした。
しかし、そんな状況は長くは続きませんでした。1991年にバブルが崩壊し、同時に不動産価格も一気に下落したのです。
そもそも、需要と供給のバランスで物件の販売価格が決まっていたのであれば、激しく上下することはありません。需要も供給も急激に変化することはないからです。
不動産需要が急速に盛り上がるケースとしては、急激な人口増加などがありますが、日本では考えられません。供給にしても、土地を仕入れて物件を建築するにはそれなりに時間がかかります。そのため不動産価格が急激に動くときには、経済の影響を受けていることが多いのです。