今回は、築古の鉄筋コンクリート物件にあったトラブル事例を見ていきます。※本連載では、徹底した現場主義で多くの賃貸トラブルを解決へと導いてきた太田垣章子氏の著書、『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、「空室」「滞納」など様々な賃貸トラブルの予防策と解決法についてわかりやすく解説します。

お嫁さんひとりでは「とても解決できない」状態の物件

義理の父親から賃貸経営を任された、お嫁さんからのご相談です。

 

それまで賃貸業に携わったことがなく、ある日突然「これからよろしく」と資料を渡されたそうです。物件は築50年ほどの、鉄筋コンクリート造りの5階建てで、エレベーターはありません。父親は管理委託をせずに自主管理をしていましたが、空室対策を行なっていなかったので、20戸のうち5戸しか埋まっていない状態での引き継ぎでした。

 

その物件の状態は、廃墟のようなひどさで驚愕されたそうです。さらに必要書類を確認すると、契約書はないけど滞納はあるなど、「全戸が問題アリ」という状況です。

 

そこで、「ひとりではとても解決できない」と、ご相談に来られました。

 

ひとつひとつ確認していくと、いいこと悪いこと、色々なことがわかりました。

 

まず、入居がある5戸のうち、滞納が3戸。残りの2戸のうち1戸は、契約書を交わさないまま鍵を渡してしまい(急ぎの入居だったようです)、最後の1戸は、入居者に放尿癖あり。また、築50年の鉄筋コンクリート物件なので、これから高額な維持管理費がかかってきます。さらに、エレベーターも外づけできない構造だったので、長い目で見ると手放すことも選択肢として有効だと思いました。

 

とりあえず今は、問題がある5戸の入居者に退去をお願いし、その後のことは父親も交え、ゆっくり検討していくことになりました。

酔うと「放尿癖」が出る入居者から確約書を取り・・・

家賃を滞納している3戸は、退去してもらう理由が正当なので、事務的に明け渡しの法的手続きを進めます。契約を交わしていない1戸は、生活保護受給者でした。役所にかけあうと、入居してまだ1週間ということもあり、すぐに別の物件に転居してくれました。

 

やっかいなのは、残りの1戸。放尿癖がある入居者です。酔うと所かまわず放尿してしまい、さらに記憶も飛んでしまうそうです。ただお酒を飲まなければ、そう悪い人ではなさそうなので、アルコールが入ってないタイミングで家主さんと訪問しました。

 

どこまで本当かわかりませんが、自分のイタズラの詳細は覚えていないようなので、今までのことを話し「これからはしません」といった確約書に署名押印してもらいました。

 

この書面をもらったからといって、イタズラがなくなるわけではないでしょう。ただ次にそのようなことがあったときに、退去を促しやすくするためです。

 

数日後、残念ながらというか、案の定というか、幸いというか、あっという間に確約書が効力を発揮しました。今回は、隣のマンションの駐車場で、車めがけて放尿してしまいました。さらに悪いことに、防犯カメラにその一部始終が録画されていたのです。

 

隣のマンションは分譲マンションだったため、管理組合と車の所有者の方が警察に通報。ここまでくると「覚えていない」とは言えません。警察沙汰と確約書、これがダブル効果となりその後、その男性入居者はマンションから退去して行きました。

 

ほぼ同じ頃、家賃滞納の入居者も裁判で明け渡しの判決が言い渡され、これで5戸すべての退去が完了しました。

2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド

2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド

太田垣 章子

日本実業出版社

アパート・マンション経営の多くのトラブルは「知識」さえあれば防ぐことができる! 15年間で2000件以上の問題を解決に導いた、現場を知り尽くした著者だからこそ書ける事例を紹介するとともに、賃貸トラブルの予防策・解決…

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