今回は、築古の収益物件活用で求められる「出口戦略」について見ていきます。※本連載では、徹底した現場主義で多くの賃貸トラブルを解決へと導いてきた太田垣章子氏の著書、『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、「空室」「滞納」など様々な賃貸トラブルの予防策と解決法についてわかりやすく解説します。

修繕するか、タイミングを見て建て替えか・・・

鉄筋コンクリート造りの物件に限らず、賃貸物件は生き物なので、手入れをしないと朽ち果ててしまいます。しかも管理が行き届いていない物件だと、今回のケースのように、いい入居者を確保することができません。

 

そうなると悪循環となり、問題のある入居者がどんどん集まってしまいます。空室ではないが家賃を滞納され、収益が上がらないというようなことも生じかねません。

 

まずは賃貸経営の大前提として、掃除を徹底し「住みたい」と思ってもらえる物件にしましょう。

 

室内が古くなってくると、リフォームなども必要になるかもしれませんが、和室からフローリングに変更したり、間取りごと変えたりするような大がかりなものは、費用がかなりかかります。リフォーム代の回収にどれほどの期間がかかるか、専門家によく相談してから決めましょう。仮に高齢者の入居者を対象とするなら、和室のほうが好まれるなど、リフォームの方向性も目的によって選ぶことをおすすめします。

 

とくに鉄筋コンクリート造りの建物は、築年数を重ねると、メンテナンスに費用がかかり収益率も下がってしまいます。築50年を過ぎると、そこからの維持管理費用はかなりの額が必要になると覚えておきましょう。

 

「いっそ、それならば・・・」と、建て替えを検討したとしても、鉄筋コンクリート造りの物件は、取り壊しに莫大な費用がかかります。規模にもよりますが、数千万円かかってしまうこともあります。

 

そこで重要になるのが、「最終的にどうする物件なのか」とゴールを決めることです。修繕をしつつ耐久させるのか、どこかのタイミングで取り壊して建て替えるのか、それとも売ってしまうのか・・・。

ある程度の築年数を重ねたら「売却」という選択肢も

鉄筋コンクリート造りの建物は、多くの物件がそれなりの大きさを備えているので、見た目が立派です。そのため、手放すことを躊躇される家主さんも多いのですが、ご自身の年齢、次の世代が賃貸経営に興味を抱いているか、修繕や建て替えなどの費用の準備が整えられるのか・・・などを総合的に判断すると、ある程度の築年数を重ねたら売却したほうがいい場合もあるので、選択肢として覚えておきましょう。

 

この家主さんは、私がアドバイスをして入居者が全員退去したタイミングで売却し、その費用で「戸建賃貸」を数件建てられました。

 

余談ですが、相続税の支払いに現金が足りない場合、戸建賃貸なら個別に売却もできます。また一般的には戸建賃貸の場合、入居期間が長くなります。相続時にも分割しやすいので、最近人気が高まっています。

 

<POINT>

●古い物件は徹底した管理で、いい入居者を確保できる工夫をする

 

●リフォームする場合は、リフォーム代の回収期間も念頭におく

 

●鉄筋コンクリート造りは、維持や取り壊し費用が高いことを覚えておく

2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド

2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド

太田垣 章子

日本実業出版社

アパート・マンション経営の多くのトラブルは「知識」さえあれば防ぐことができる! 15年間で2000件以上の問題を解決に導いた、現場を知り尽くした著者だからこそ書ける事例を紹介するとともに、賃貸トラブルの予防策・解決…

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