いざ売りたいと思ったときには、すでに手遅れとなってしまっているケースも少なくありません。ここでは、オーナー社長として、売却を思い切るタイミングについてご説明します。

最高潮で売るのは至難のワザ

外部環境の変化で「売り時」を逸することがあるわけですが、売り手の会社の経営状態などによって、最適なタイミングを逃してしまうといったこともあります。 
 
実は、オーナー社長本人が売りたいと思ったときは、既に絶好のタイミングを逃している、有利な条件が望めない、あるいは手遅れで売ることができないといったこともあるのです。

ヘンに欲張りすぎて、「自社の企業価値はもっと上がるはず」などと構えていると、実際にM&Aに取り組む際には、希望価格よりもはるかに下の額となってしまうことがあります。 

 
買い手にも事情があり、「今年度中に○○地区の拠点が欲しい」「今期の売り上げと利益をM&Aによって伸ばし、株式公開の準備をしたい」など、経営の計画に合わせてM&Aを検討しています。 

 

 

 
売り手が躊躇しているうちに、買い手は「会社を本気で売る気があるのだろうか」と疑ってしまうこともあります。 
 
通常、買い手は複数のM&A案件の提案を受けていることがあるため、たとえあなたの会社が一番魅力的であったとしても、交渉が長期化しそうであれば、別の会社の買収検討に向かったりするのです。

オーナー社長の高齢化が業績の悪化につながることも

優秀な実績を収めていた会社でも、オーナー社長が70歳前後になると、業績は下降気味になります。 
 
気力、体力、トレンドを捉える感度・・・これらが年齢と共に衰えたり、若い世代との間にギャップが生じてしまったりするのは自然の摂理です。 
 
「自分はまだ65歳。会社の業績も堅調だし、若い者には負けない」 
 
このような自信は大切でしょうが、思い込みや過信になってしまうといけません。 
 まだ自身が元気な今こそが、事業承継やそのための有効な手段であるM&Aを真剣に検討し始めるべき好機なのです。 
 
既に触れたように、中小企業のオーナー社長がM&Aで会社を売ろうと動き始めるのは、年齢や体調不良、後継者が見つからないといった事情に接してからのことが圧倒的に多いといえます。 
 
ただその時は既に、多くの会社は絶好の売り時を逸しているというわけです。 

 

 

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『オーナー社長のための会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オーナー社長のための会社の売り方

オーナー社長のための会社の売り方

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

オーナー社長にとって、会社人生の最後で最大の仕事こそが事業承継。 創業以来、長年に渡って経営してきた会社を次代に残す。また、従業員の雇用を守りつつ、買い手企業の新たな資本の元で、会社の価値をさらに高めていくこと…

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