“見直し”ひとつで売れる時期も変わる
業法については法改正が行われなくても、一部の権力者や関係者が規制強化などの見解を示しただけで、業界をとりまく情勢が大きく変わることもあります。ただ、通常、法改正や規制強化が突然行われることはありません。まずは検討委員会などが発足し、一定期間は議論が行われるのが普通です。
1年~数年前には見通しがわかることが多いので、そのような見通しも含めてアドバイザーとよく相談しましょう。
例えば、現在一部の首長や国会議員がカジノ解禁を主張していますが、税収増を図る意味でも現実味を帯びつつあります。以下はあくまでも一例ですが、先を読むということの参考です。
●カジノが解禁されると・・・
候補地周辺の商業地(不動産)、飲食や宿泊業、タクシーなどのインフラは活況?
逆に、周辺のパチンコなどの遊戯関連施設には打撃?
●マイナンバー制度が施行されると・・・
2013年5月に成立したマイナンバー法案の制度施行により、情報関連分野やITシステム関連業などは活況を呈する?
先を読むということは難しいですが、日ごろからこういった思考をする習慣を付けておくことが、M&Aのタイミングをつかむ訓練になるはずです。
自然災害や不慮の事故による予測できない事態も
2011年3月11日の東日本大震災における津波被害や液状化被害によって、該当地域の産業や不動産価格は、大きな影響を受けました。
風評も含めて、価値が毀損した地域も多いですが、逆に高台の不動産価格は高騰しました。また、建設業や廃棄物処理業では、一種のバブルが起こった例も実際にあります。
今後、復興が進むにつれて、純粋に経済的な判断から、被災地企業のM&Aを検討する買い手も増えてくるかもしれません。
予測が不可能に近い自然災害一つをとっても、M&Aにはプラスに働いたりマイナスに働いたりするわけです。
このような自然災害は、売り手にも買い手にも予測が難しい「外的」な遠因ともいえます。
一方、そのような予測の難しい遠因による影響がないにもかかわらず、買い手の事情によって交渉が中断したり破談したりするようなこともあります。
買い手の事情で売り時を逃すこともある
例えば、急激な為替の変動により、買い手の経営戦略が変わる・・・このような事情から、M&Aの検討そのものが変更になることもあるのです。
売り手の会社が漏れなく準備を進め、外的な要因がないにもかかわらず、買い手企業の事情の変化によって交渉が頓挫する可能性があることも知っておく必要があります。
M&Aは結婚と似ています。両者が誠意を尽くし、仲人さんなど信頼のおける仲介者があいだを取り持つ。あとは“縁”というタイミングです。
何かの事情で良縁を逃さないためにも、いい話があれば、積極的に、かつ話を前向きに進めるのがよいと思います。