2017年1月31日、最高裁判所によって、節税目的の養子縁組の有効性が認められました。本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

養子縁組により、養親と養子は互いに扶養義務を負う

(1)資産移転の方法

 

書籍『相続に活かす養子縁組』第1章一で述べたとおり、養子縁組をすることによって、養親と養子とは、互いに扶養する義務を負うことになりますし、また、互いを相続する権利を持つことになります。そこで、たとえばAがBに自分(A)を扶養して欲しいと思う場合、あるいはAがBに(Aの)財産を譲渡したいと思う場合、Aが養親となりBが養子となって、AとBとの間で養子縁組をすることがひとつの選択肢となります。

 

ところで、扶養を期待して財産を譲渡するという場合、あるいは扶養よりも財産の譲渡が主目的という場合は、養子縁組ではなく、贈与、遺言、死因贈与などの手続きをとることも考えられます。そこで、まず、贈与、遺言、死因贈与について、内容、メリット、デメリットについて考えてみます。

 

 

■資産移転の方法

○贈与

○遺言

○死因贈与

○養子縁組

「贈与」による資産移転のメリット・デメリット

①贈与

 

贈与とは、先の例でいえば、Aが、自分の財産を無償でBに与えることをいいます。財産の譲渡としては最も簡単な方法ですが、贈与には高額な贈与税がかかります。贈与税の計算は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与された財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引き、その金額に税率を乗じて税額を計算するということになります。贈与する金額が大きくなると、贈与税も高額なものになってしまうのが難点です。

 

また、いったん贈与をしてしまうと、その後Aと(Aから贈与を受けた)Bとの関係が悪くなっても、贈与した財産を取り戻すことはできません。

 

これらのことを考慮すると、一度に多額の財産を贈与するのではなく、贈与税がかからない、あるいは低い金額の贈与税しかかからないという程度の贈与をすることが考えられます。たとえば、相続税対策の一環として、子や孫に毎年少額の金銭を贈与するというのは有効な方法とされています。

 

ただ、たとえばお世話になっている人がおり、その人に何らかの形で経済的に報いたいというような場合は、毎年、少額とはいえ現金を渡すというのは抵抗があることが多いでしょうから、贈与というのもやりにくい面があります。

 

 

■毎年、現金を渡すのはやりにくい点もある

本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続に活かす養子縁組

相続に活かす養子縁組

森田 茂夫,榎本 誉,田中 智美,村本 拓哉

日本法令

養子縁組にまつわる法的問題と、制度活用時のポイントを解説。 平成29年1月31日、最高裁は、節税を目的とする養子縁組の有効性を認めた。 本書は、この判決を契機として、養子縁組をする際の法律上の制約、養子縁組の意思…

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