企業のIT部門は「ITプロジェクト推進」の窓口!?
1990年代後半、当時の日本ロシュの繁田社長が「これからの経営者はIT投資の重要性を理解できなければいけない」と言われました。しかし今もITに対して理解が足りない日本の経営者が多いのではないでしょうか。だから、まだ今からSFAやCRMの導入を検討する段階にいるように思います。
ITの利用を加速しようとすると、ユーザー部門での要件定義をしっかりと社内でできる能力・人材の育成が不可欠です。かつて私も最初のプロジェクトではどうしていいか分からず、堂々巡りが続きました。
これは私たちも当時のIT部門に対して彼らの置かれている状況以上の期待をしていたことと、私たち自身の情報収集・学ぶべきことの不足がもたらした結果でした。特にシステム化するための業務の切り分けはプライオリティを正確にはっきりとすることが必要ですが、当時はそれすらもできなかったのです。
社内のIT部門は、マーケティング部門からみれば専門家です。ですが、ITが細分化し、進化を遂げる過程を見ているとそれは今後大きな勘違いのもととなりえます。ひと括りにまとめて考えるのが無理なくらいITは複雑さを加速させています。
IT部門はITの専門家ではなく、ITプロジェクトを進める窓口と解釈すべきでした。システム構築についての知識や経験はあるにしても、ITの適応範囲が広大になってくればくるほどその細部の専門家ではなく、社外の専門家を探してくるプロジェクトの担当という位置づけになるのではないでしょうか。
こういう勘違いは、日本企業の中で今も起きているのではないでしょうか。しかも日本企業の情報システム部門は、大企業になるほど基幹システムしか担当できなくなっているのではないでしょうか。企業の成長が止まるとIT部門からまず人数を減らす傾向もあるので、既存の基幹システム以外に手を広げる余裕がありません。
しかし、これでは会社の発展はありません。
必要なのは「ユーザーの立場」でITに通じている人間
営業のための情報システムを入れてほしいという話が、営業部門から当社に直接来ることもあります。しかし営業部門の人はITの専門家ではありません。すると社内にITに詳しい専門家が育たず、ITに関する経験が積まれないままになってしまいます。
ITベンダーのように特定分野に詳しい専門家は社内には不要かもしれません。しかしユーザーの立場でITに通じている人間はぜひ育成しておかなければなりません。
クラウド化が進めば進むほど、最先端のITを理解するのが難しくなり、部門ごとに〝業務要件〞と〝システムとデータの必要要件〞を理解できる経験豊富なスペシャリスト育成が必須になります。