前回は、企業の「IT関連の責任者」にふさわしい人材の条件を説明しました。今回は、日本企業の競争力が失われている原因を見ていきましょう。

お金だけでなく、人的リソースも必要以上に取られ…

IT部門の人事や人材育成にはあまり関心がない会社でも、大企業になると大変な金額をかけてITシステムを導入します。

 

ところが投資額が膨らむのは、必要性を検討した上でそれに応じて配分したからではありません。一からのシステムのつくり込みやカスタマイズありきでプロジェクトを進めているからです。世界で日本だけがパッケージの利用ではなく、自社開発が主流だと思われているのをご存じでしょうか。

 

大企業の方々は長年かかって出来上がった自分たちの仕事のやり方が正しいと考え、それにシステムが合わせるのが普通と思っていないでしょうか。そのためにシステムインテグレーションの投資をその都度行っているのは今や日本の大手企業だけです。

 

ITプロジェクトはお金だけでなく、人的リソースも取られます。ITシステムが全体的に複雑化していっている中で、新たな開発プロジェクトを組むことで、社内でほかにやるべきことが処理されず、後回しになりがちです。その結果、企業を弱くしていくことにもなっています。

 

私ももちろんシステムインテグレーションのプロジェクトに関わったことが何度もありますが、労力と投資金額ばかりが膨らんでいきました。本当に効率的なのかを何度も疑問に思ったことがありました。

 

先日、医療機器メーカーのIT部長にお目にかかったところ、過去15年間で開発に投じてきたのと同じだけ保守にも費用がかかり、パッケージの活用に目が行っていたらこうはならなかったのにと後悔していました。

システム構築ではなく、「パッケージツール」の導入を

1990年代末に勘定系のSAPというドイツのパッケージをグローバル主導で導入したときに、SAPの人から「パッケージに仕事を合わせてください。その方がはるかに効率的ですから」と言われたのを今でも覚えています。

 

システム構築に何千万や何億円もかかるところが、パッケージツールだと一桁少なくてもできるかもしれません。しかも保守管理費用もかからず、少人数で運用も回せます。パッケージを導入したときの全体としての人・物・予算の投資効果を出してみれば、答えは明らかではないかと思います。もっともそれが理解できるには、要件をきちんと見極めて見積もりができる能力が必要です。

 

日本ではIT産業人口の約8割がSI会社にいます。アメリカでは逆に約8割がユーザー企業にいます。これが日本のSIの社会的構造です。

 

役に立つか立たないかを十分検討して投資するようにして、日本企業は今までのやり方から効率的な方向へと切り換えなければなりません。でないと競争力はますます失われます。これからの時代、本当の意味で成果の出せるIT投資をしていかなければなりません。

本連載は、2016年12月13日刊行の書籍『最強営業部隊をつくるタブレットPC活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

最強営業部隊をつくるタブレットPC活用戦略

最強営業部隊をつくるタブレットPC活用戦略

関根 潔

幻冬舎メディアコンサルティング

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