返済を行うだけでは「その他大勢」に埋もれてしまう
多くの大家業は、金融機関から融資を受けることでスタートを切ることができます。金融機関にとっても、お金を皆さまにお貸しすることで、長期的なお付き合いがスタートします。
金融機関は、顧客とのなれ合いが起きないように、おおむね3年ごとに担当者を異動させます。だから、担当者との付き合いは、そのたびに途切れてしまいますが、その金融機関との付き合い、ひいては融資を受けたその支店との付き合いは、完済するまで継続します。このことをしっかり覚えておいてください。
皆さまが融資を利用して長期的な収益を上げていくのと同じように、金融機関も皆さまに融資をして利息を付けて返済してもらうことを通して収益を上げていきます。両者は、一心同体のような存在ではないかと私は考えています。つまり、皆さまが大家として行う賃貸業が傾いてしまえば、金融機関も利息収入が途絶えてしまいかねないという意味で、一蓮托生ではないかということです。
金融機関はいろいろな方に融資を行っていますから、皆さまがお借りする金額というのは、全体の中で見れば少額なのかもしれません。しかし、貸し出しをしているお客さまの一人という点では同じです。
では、その中で大勢のお客さまの中に埋もれず、皆さまが金融機関や支店の中で目立つ存在になるにはどうしたら良いと思いますか?
その一番良い方法は、定期的な報告をすることだと私は考えています。大家業に限らず、他の事業を行っている会社も含めて、皆さまお金を借りるまでは必死にいろいろと考えたり、金融機関からの要望を踏まえてさまざまな対応をしたりします。融資を受けることが目的であるので、当然と言えば当然です。
ただ、その目的を達成してからがスタートなのに、融資を受けてしまうと、それっきり連絡をしなくなってしまう方がとても多いそうです。金融機関には、「決まった期日に遅れることなく利息を付けてお金を返してくれればOK」という大前提があるので、毎月の返済を滞りなく行っているのであれば何ら支障はありません。
しかし、これでは、「その他大勢」に埋もれてしまいます。そこで、ぜひ皆さまにしていただきたいと思うのが、定期報告です。その報告のタイミングで一番良いのが、確定申告をした後です。
申告書類を持参して顔を合わせ、融資姿勢などを確認
確定申告は不動産を含めた1年の収支決算のような書類です。その書類を金融機関に毎年持参して、昨年の報告をするのです。
皆さまの多くが決算報告などに関してあまり明るくないのは、金融機関の方も分かってくれていますので、顔合わせのような感じで良いと思います。不動産収支の部分の大枠をお伝えし、大家業拡大という意味で追加物件の購入も検討しているという話をして、追加で融資していただける見込みがあるかないかを参考までに聞くという場になれば、有意義な時間になるのではないかと思います。
私自身も、毎年必ずこの報告をするため、金融機関に行くようにしています。年に一度であれば、支店長や融資の責任者も、時間を割いていただける可能性が高いです。20分や30分でも十分。ここで話をすることで、その金融機関のその時点での融資姿勢が垣間見えたり、追加の融資が受けられるかどうかの目安も見えてきたりもするのです。
金融機関の担当者も人間です。顔を合わせない人よりも、たとえ年に一度であったとしても顔が見える人の方に、信頼を置きたくなると思うのです。また、顔を合わせていれば、融資が本当に必要になったときも話がしやすいですし、毎年の確定申告書などの資料も渡しているので、すぐに話を進められるでしょう。
ぜひ、確定申告をした後には、金融機関との関係作りという意味合いも兼ねて、訪問してみてください。ただ、くれぐれもアポなしで行かないようにしてください。事前に電話をして日時を決めてから伺うのがマナーです。