今回は、「小規模宅地等の特例」の限度面積をオーバーした場合の対応法を見ていきます。※本連載は、社団法人・ソフトウェア開発・建設など、約100社の税務に携わる、公認会計士の笠原清明氏の著書、『税理士が教える 知って得する相続 揉めて損する相続』(PHP研究所)の中から一部を抜粋し、相続の“新しい常識と対策”をわかりやすく解説します。

土地を選択し、減額金額が大きくなる方法を検討

前回の続きです。

 

それでは自宅の土地面積330㎡、賃貸用不動産の土地面積200㎡のケースで考えてみましょう。限度面積は次のとおりなので、大幅にオーバーしています。

 

①自宅の土地面積→330㎡×200÷330=200㎡

②賃貸用不動産の面積→200㎡

③①+②=400㎡→限度面積200㎡をオーバーしている

 

このような場合、小規模宅地等の特例を最大限に活用し、どちらの土地を選択すれば減額金額が大きくなるか、検討する必要があります。ここで賃貸用不動産(貸付事業用の宅地等)と、自宅(特定居住用宅地等)の減額率を確認しておきましょう。

「減額率」ではなく、「減額される金額」で考える

◆賃貸用不動産(貸付事業用の宅地等)50%

◆自宅(特定居住用宅地等)80%

 

これを見ると、減額率は自宅のほうが大幅に大きいですね。単純に考えれば、減額率の大きな自宅に小規模宅地等の特例を適用したほうがよい、と考えてしまいがちです。ところが、有利不利の判定にあたっては、「減額率」ではなく、「減額される金額」で考える必要があります。

 

なぜなら土地の単価によっては、減額率の低いほうでも、減額金額が大きくなる場合もあるのです。次のケースで考えてみましょう。

 

●賃貸用不動産200㎡(1㎡あたり100万円)→2億円

●自宅330㎡(1㎡あたり30万円)→9900万円

 

【賃貸用不動産を優先して選択した場合】

●限度面積200㎡→OK

●減額される金額2億円×50%=1億円

 

【自宅を優先して選択した場合】

●限度面積330㎡×200÷330=200㎡→OK

●減額される金額9900万円×80%=7920万円

 

計算してみると、減額される金額が大きいのは、減額率が低い賃貸用不動産を優先したほうでしたね。

税理士が教える 知って得する相続 揉めて損する相続

税理士が教える 知って得する相続 揉めて損する相続

笠原 清明

PHP研究所

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