今回は、節税対策として有効な「小規模宅地等の評価減」が活用できる範囲について、さらに深く見ていきます。※本連載は、社団法人・ソフトウェア開発・建設など、約100社の税務に携わる、公認会計士の笠原清明氏の著書、『税理士が教える 知って得する相続 揉めて損する相続』(PHP研究所)の中から一部を抜粋し、相続の“新しい常識と対策”をわかりやすく解説します。
不動産貸付以外の個人事業に使用している土地も対象
前回の続きです。
ここで、「小規模宅地評価減の概要」(下図)を確認してみましょう。前項で説明したのは、概要表の要件、⑤と⑥に該当するケースでした。
[図表]小規模宅地評価減の概要
この概要のとおり、小規模宅地等の評価減は前回のケースだけでなく、不動産貸付以外の個人事業に使用している土地や、オーナー会社に貸しつけている不動産についても適用できます。概要表の要件、①②③④に該当するケースです。
事業に使用する土地との併用で節税対策に!?
そして注目していただきたいのが、①と②に該当するケースです。減額率が80%に設定されています。つまり特定居住用宅地等と同じ、「80%OFF」という大変有利な減額率になっています。
さらに、特定居住用宅地等と①②を適用する場合の限度面積の計算も、非常に有利になっています。「①+②」の面積が400㎡以下であり、また、特定居住用宅地等の面積も330㎡以下であればよいとされているのです。
つまり、そもそも制限面積が広いのに加えて、さらに完全併用することが可能になっているのです。その限度面積は最大730㎡にもなります。今後、不動産貸付以外の個人事業による“節税対策”が注目されるかもしれません。
税理士
昭和32年、埼玉県さいたま市に生まれる。昭和54年、税理士試験に合格。昭和55年、中央大学商学部会計学科卒業後、公認会計士長隆事務所に入所。昭和59年、東京都新宿区で開業。
現在、社団法人・ソフトウェア開発・小売・建設・上場子会社など、約100社の税務に関わる。
著書には『フリーで仕事を始めたらまっさきに読む経理・税金・申告の本』『起業したらまっさきに読む経理の本』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『経理に使えるEXCEL事典』(明日香出版社)、『小さな会社の仕訳と記帳』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ビジネス実務とPC活用』(日経BP社)、『図解本 小が大に勝つための会計学』(中央公論新社)、『営業日誌は書くな!』(角川学芸出版)などがある。
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