一番トレーダーに使われている「指数平滑移動平均」
移動平均線は、一定期間の終値の平均値をつなぎ合わせて線にしたものです。先ほど(※前々回参照)の設定では、移動平均線の期間を20にしましたね。これは、ローソク足20本分の「終値の平均値」になります。移動平均線をチャートに表示することで、ローソク足だけで見るよりも、相場の流れがわかりやすくなります。
ローソク足は、いわば棒グラフです。例えば1分足であれば、ある1分の間に、相場がどのような動きをしたのかを正確に判断するために使います。
一方、移動平均線は、いわば線グラフです。1本1本の細かい動きではなく、20分間などの一定期間内での相場の動きが一目でわかるように作られたものです。つまり、ローソク足は相場の現在値、移動平均線は過去を含めた相場の平均値を表しています。移動平均線を表示することにより、現在と過去をくわしくとらえることができます。
移動平均線の計算方法は、3種類あります。
①単純移動平均(SMAまたはMA)
②加重移動平均(WMA)
③指数平滑移動平均(EMA)
私は、③指数平滑移動平均(以下「EMA」)を好んで使っています。なぜならEMAが一番トレーダーに使われているからです。多くのトレーダーが使っているということは、みなEMAをとても意識しているということなので、チャート分析においても有効に機能するはずです。そうはいっても、SMAもWMAも同じ移動平均線であり、ほとんど差はありませんし、EMAでなければ勝てなくなるということはありません。
特にSMAやWMAを使う理由がないなら、EMAにするという程度です。
それぞれ、簡単に違いを説明しておきます。
①単純移動平均=Simple Moving Average
文字通り、ある一定の期間の終値を単純に平均した数字で作られている移動平均線です。
②加重移動平均=Weighted Moving Average
5日加重動平均線の場合、5日目の価格を5倍、4日目の価格を4倍、3日目の価格を3倍、2日目の価格を2倍にして計算しています。こうすることで、単純移動平均よりも、直近の価格に重点を置いた分析ができるようにしています。
③指数平滑移動平均=Exponential Moving Average
直近の価格を2倍にして計算したものです。5日EMAの場合、5日目の価格を2倍にして合計し、5で割ったものです。そのため、単純移動平均や加重移動平均線と比べて、より直近の価格に重点を置いたものになっています。
特別なこだわりがなければ、EMAを使うことをおすすめします。他の移動平均線でもかまいませんが、ちょっとしたタイミングはずれるかもしれません。ただ、基礎さえできれば、少し検証することで、その移動平均線に合わせたルールに仕上げることはできるでしょう。
また、期間を20に設定しましたが、21や22では駄目でしょうか?そんなことはありません。期間は、どんな数字でもかまいません。数字を1変えるだけで、ルールが変わって勝てなくなるということはありません。ただ、短期移動平均線でメジャーな数字は、20か25です。25でもいいと思いますが、私はずっと20を使ってきたので、設定もそうしています(20と25を比較した結果、25は使えない、ということではありません)。数字が少し変わって勝てなくなるというのは、そもそもインジケータに踊らされているだけで、自分が使いこなせていない証拠です。
移動平均との乖離幅を視覚的に把握できるエンベロープ
次に、エンベロープについてくわしく見ていきましょう。
エンベロープは、日本語で「封筒」や「包み込む」という意味です。その名の通り、移動平均線の上下に一定の乖離幅を持たせて表示する「線」です。いわば、移動平均線を上と下で、常に包み込んでいる線になります。チャート設定のパラメータは、偏差を除いて移動平均線と同じでしたね。移動平均線が上昇していけば、まったく同じ角度でエンベロープも上昇していきます。つまり、移動平均線と常に同じ動きをし、偏差が乖離幅ということです。
エンベロープのよさは、「移動平均線との乖離幅」がパッと見てすぐわかるところです。設定でエンベロープを6本表示しましたが、1本ではなく何本か表示することで、移動平均線との乖離幅が「視覚的に」わかります。
この「視覚的に」という点が、とても重要です。チャートを見たときに、人はまず目に入る情報を取り入れようとします。チャートには出ていない行間を読むような分析をしなければならないと、とても大変ですよね。ですが、エンベロープを表示しておくことで、簡単に相場環境がつかめるのです。これが、長く続く秘訣でもあります。労力を使う手法では、それが勝てるやり方だとしても、疲れて嫌になってしまうものです。ですが、効率よく簡単に、一目でチャートから情報を得られるかどうかが重要なのです。
なお、「移動平均線との乖離幅」は、本スキャルピング手法の根本方針になります。第11回からくわしく紹介するので、ルールを読んでから、なぜこのチャート設定がいいのか、改めて考えてみてください。