今回は、ブロックチェーン技術の向上で「証券取引」がどう変わるのかを探ります。※本連載は、NTTデータ経営研究所でシニアコンサルタントとして活躍する桜井駿氏の著書、『超図解ブロックチェーン入門』(日本能率協会マネジメントセンター)の中から一部を抜粋し、ブロックチェーンがもたらす様々な変化について、具体例と図解で分かりやすく紹介します。

株式の発行や譲渡、売買をブロックチェーン上で処理

証券取引には以前からITが活用されていることは周知のとおりです。ITにより高速取引が実現でき、世界中で膨大な件数の取引とお金が日々動いています。しかし、証券取引そのものは高速化できても、証券の引渡しと代金決済には時間がかかっているのが現状です。

 

そこで、企業の株式の発行そのものをブロックチェーン上で行い、その譲渡や売買に関する管理もブロックチェーン上で処理するという取り組みが開始されました。証券業の場合も業務オペレーションの効率化とコストの削減において期待が寄せられています。

 

ただし、証券の取引をブロックチェーン上に移行して実施した場合でも、資金の決済がハードルとなります。この取引における決済の課題は証券のみに限られた話ではありません。ブロックチェーン上で行う取引の決済処理は共通の課題です。

 

また、決済が仮想通貨が使えず、法定通貨に限られることも解決すべきことです。さらに、IT化が進んでいる証券業をはじめとする金融業界では、既存システムとブロックチェーンの整合性の検証も課題の1つです。

ブロックチェーン活用に向けた実証実験も始まる

こうした課題の洗い出しが始まっているなか、2016年2月、日本取引所グループと日本IBMが共同でブロックチェーンの証券取引への活用に向けた実証実験を開始しました。

 

同年8月には、「金融市場インフラに対する分散型台帳技術の適用可能性について」というワーキングペーパーを公表しています。同発表ではブロックチェーンに対して一定の評価を認め、同年11月には、実証実験の知見をベースとして業界連携型の技術検証をスタートさせています。

 

2017年1月末より参加金融機関の募集を開始しており、今後業界連携を通して取り組みを推進していくことなります。

 

[図表]各業務をいかに整合させるか

超図解ブロックチェーン入門

超図解ブロックチェーン入門

桜井 駿

日本能率協会マネジメントセンター

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