正体不明の人物「サトシ・ナカモト」の論文がきっかけ
ビットコインは、2008年、「サトシ・ナカモト」を名乗る正体不明の人物が暗号理論に関するメーリングリスト内で発表した1つの論文が起源とされています。これまで何度か「サトシ・ナカモトは私だ」と名乗りをあげる者が現れ、そのたびに騒動となりましたが、結局のところ、このサトシ・ナカモトは未だに誰なのか判明していません。
この論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」(ビットコイン:P2P電子決済システム)」は、既存の金融業界への体制批判になっています。リーマンショックが発生した当時のことです。
この論文で、中央集権型金融システムに異議を唱え、利用者同士が仲介する者を不要として取引できるP2P(Peer to Peer;対等の者同士が通信を行うこと)による電子決済システム、つまりは中央集権型ではなく分散型の通貨のしくみへの移行を提唱しました。これが、ブロックチェーンのもととなるアイディアです。
その後、サトシ・ナカモトと有志のエンジニアたちによってビットコインのソフトウェアがリリースされました。サトシ・ナカモトからソフトウェア開発者に送金されたビットコインが最初の取引となり、その後取引は拡大を続け、現在に至ります。その時価総額は本書執筆時点(2017年9月)で7.6兆円にも及びます。
「投機性」と「将来性」から利用者が急増
ここまで急速に利用者を増やしたのは、ビットコインの投資資産としての魅力にあるといわれています。ビットコインは特定の管理者や裏づけとなる資産がなく、取引の需給に応じて価格が変動します。その変動幅は既存の投資資産と比較して大きいため、投機対象になりやすいのです。
また、ビットコインという新たなお金のコンセプトに将来性を感じる人々が増えていることもその理由のひとつだと思われます。
[図表]サトシ・ナカモトの論文のポイント