相続対策は親に動いてもらわなければ実現できません。本連載では、子の側として知っておきたい相続の知識を、「基本編」「土地・建物編」「株・法人編」という3つのカテゴリーに分けて紹介していきます。

相続放棄や限定承認は3か月以内の手続きが必要

相続にはたくさんの節税方法や注意事項があります。本連載では、相続人となる子の側としても、知っておいて損にはならないこと、もしくは知っておかないと後々に困ってしまうようなことを、【基本編】【土地・建物編】【株・法人編】と3つのカテゴリーに分けて、全部で50項目紹介していきます。

 

資産状況によって把握しておくべき項目は異なりますが、基本編は相続を迎えるすべての人が共通で知っておくべきこと、土地・建物編は不動産を多く所有している方や資産が多額で不動産を利用した節税対策を検討されている方が知っておくべきこと、株・法人編は法人化の利用を考えている方や中小企業などを経営されている方などが知っておくべきことです。

 

もしその場で理解できない項目があれば後回しにしても問題ありません。また、具体的な数値や実務の部分をすべて把握しておく必要はありませんので、そこは専門家などに改めて聞くことで解決できます。概要を知った上で、必要だと思う項目について相続人となる親と相談し、実施する際は専門家などに意見を求めるようにしてください。

 

【基本編】

1 相続の発生から納税までの流れを知る

相続税の申告・納税は、相続発生から10か月がリミット(期限)です。

 

【図表】相続発生から税納付までの流れ

まず、相続は親が亡くなった時から開始されます。親(被相続人)の死亡届を市町村役場に提出するのが死後7日以内。並行して、被相続人が遺言書を残していないかを速やかに確認します。遺言書の有無によって、相続人や相続分が変わってくる可能性があるからです。

 

次は、相続人の確定です。遺言書がない場合は法定相続人が相続人になり、遺言書で特定の人に財産を渡す旨の記載があれば、その人が相続人になります。

 

被相続人の財産をすべてリストアップし、どれだけの相続財産があるかを把握します。もし相続財産のうち負の財産が大半で、正の財産よりも大きい場合など、相続人が相続を拒否したい時は、相続放棄や限定承認を選択することができます。

 

相続放棄や限定承認には、相続開始から3か月以内の手続きが必要です。相続放棄や限定承認を選択せず、通常の相続(単純承認)をする場合は、ここから遺産分割協議に入ります。遺産分割協議とは、相続財産の分け方を相続人全員で話し合うことです。法定相続分に従って分けてもいいし、自分たちで分割方法を決めてもかまいません。

 

相続人全員の合意ができたところで、遺産分割協議書を作ります。遺産分割協議書は絶対に作らなければならないものではありませんが、後々の争いを防止する証拠書類という意味で、作成しておくことをお勧めします。

 

遺産分割が決定すると、実際にそれぞれの相続人が負担すべき相続税額を計算します。納税が必要であれば、相続税の申告書を作成します。具体的な納税方法を選択・決定し、実際の遺産分割や名義変更などの手続きを行います。そして、税務署に相続税の申告と納税をします。ここまでのタイムリミットが相続開始から10か月です。

 

仮に遺産分割協議が難航し、10か月以内に遺産分割が決まらない場合は、いったん法定相続分で分割したとして相続税の申告と納税をすることになります。そして、実際の遺産分割が決定したら、改めて修正申告または更正の請求をします。

現金がない場合は「物納」「延納」という方法もある

相続税は「現金」での一括納付が原則です。ただし、相続税を払うだけのキャッシュがない場合は、「物納」や「延納」という方法もあります。「物納」は、お金の代わりにモノで相続税を納める方法です。相続税額5000万円が用意できない場合、評価額にして5000万円分の不動産を納める、といったやり方をします。

 

「延納」は、本来は一括納付すべき相続税を分割で納める方法です。延納できる期間は原則5年以内です。しかし、相続財産の中で不動産や自社株などの占める割合が大きい場合は、すぐには売却できないこともあり、最高20年まで認められます。

 

物納にしても延納にしても、認められるには一定の要件を満たさねばならず、また完納するまでの利子税もかかります。現金で払えるなら、それがベストです。近年は、税務署が物納・延納を認めるケースが減っています。審査の基準が厳しくなっているからです。「お金がなければ土地で納税すればいいや」という考えはなしにして、現金で納税できる方法を早めに探っておきましょう。

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    本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    大久保 栄吾

    幻冬舎メディアコンサルティング

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