前回は、在宅での経鼻経管栄養を可能にした介護サービスについて説明しました。今回は、認知症や腰椎骨折など、問題を抱えた患者の自宅復帰サポートを行った事例を紹介します。

「認知機能賦活」訓練で自宅復帰をサポート

症例c 認知症を抱えたひとり暮らしの男性が自宅生活に復帰

 

要介護1のCさんは、軽度の認知症を抱えていました。さらにもともと慢性腎不全、糖尿病を罹患していました。

 

ある日自宅で失神し、意識レベルの低下を起こしてG病院に入院してしまいます。入院によって歩行もトイレ動作も困難な状態になっただけでなく、認知症が進行してしまい、自宅でのひとり暮らしが難しい状態になってしまったのです。そこでG病院を退院後、私の病院の地域包括ケア病棟に継続入院することになりました。

 

入院1日目に福祉用具専門相談員、訪問介護事業所職員も交えて介護支援連携会議を行い、医療と介護の連携を図ることからはじめました。介護認定の区分変更を行い、自宅に戻ってからも訪問看護が利用できるように準備を進めるとともに、リハビリも実施します。

 

地域包括ケア病棟に入院後、自宅での生活に戻れるように歩行訓練や筋力増強訓練を行いました。さらにトイレ動作が自分でできるようになるために日常生活活動訓練を実施します。その結果15メートル歩行が可能になり、トイレも自分で行けるようになりました。

 

またCさんの場合は、認知症のレベルを入院前の状態に戻すことが、自宅で生活するための大きな条件でした。そこで「今日は何日か」を確認したり、職員の名前を覚えていくといった認知機能賦活(ふかつ)訓練を行い、以前の状態にまで戻ることができるようになりました。

 

さらに自宅での生活が無理なく送れるように、入院24日目に理学療法士、作業療法士、介護支援専門員(ケアマネジャー)がCさんの自宅を訪問し、浴室の手すり設置、各動作指導などを行いました。

 

そうした努力の甲斐あって、入院31日目に、自宅へ戻ることができました。現在毎日2回の訪問介護員(ホームヘルパー)などの介護サービスを使いながら生活しています。

退院前に自宅訪問、生活に障害となるものがないか確認

症例d 骨折後、歩行訓練によって自宅復帰を実現

 

Dさんは、H病院で開腹下腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア根治術を受けました。しかし、病院に入院中に転倒して腰椎を圧迫骨折してしまいます。その後、歩行やトイレ動作が困難な寝たきりの状態になってしまい、私の病院の地域包括ケア病棟に継続入院しました。

 

特に歩行訓練に力を入れた結果、60メートルの距離が歩行できるまでになり、トイレ動作も可能となりました。入院27日目に理学療法士、作業療法士、介護支援専門員(ケアマネジャー)がDさんの自宅を訪問し、自宅に帰ってもDさんは無理なく生活できるか、障害となるものがないかを確認しました。

 

自宅で生活するには、車での移動が必要だったため、車の乗り降りを安全に行えるよう動作指導などを行いました。介護支援専門員(ケアマネジャー)との連携を図り、自宅ではデイサービスなどの介護サービスを使うこととなり、入院58日目に、無事退院して自宅へ戻ることができました。

医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

佐藤 貴久

幻冬舎メディアコンサルティング

2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、全国民の3人に1人が65歳以上になると予想されています。これまでと同じ医療体制を続けていては、高齢者は自分の望む最期を迎えられないばかりか、増える高齢者によって医療費が膨…

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