高齢者の生活状況を把握し、こまやかなケアを提供
高齢者だけの家族、あるいはひとり暮らしで在宅生活を続ける高齢者の場合、通所サービスを定期的に利用していたとしても、いつ何が起きるかわからないといった不安を常に抱えることになります。
そうした利用者を地域密着で支えるのが、地域密着型サービスです。サービス内容は通所系・入所系サービスと重複するものもありますが、基本的に自治体が小規模で運営するため、その地域に住む人だけが利用できるものです。
地域で高齢者の生活を把握し、支援するサービスは、今後の地域医療のなかでも大きな役割を果たすものとなっていくはずです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
▽家族の介護と同様のこまやかなケアを実践
基本的に訪問介護の制度は、最低30分を基準とした滞在型になりますが、本来ならば高齢者が必要とする支援は、排泄したくなったその都度、朝昼晩の食事、着替えるタイミングで・・・、と1日のなかで短時間かつ複数回にわたる介護が必要となるものです。
本当の意味で在宅介護を根づかせるには、利用者が必要な時に手を差し伸べられなければなりません。それを実現するのが「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」です。1日に数回の定期的な訪問に加え、緊急時の呼び出しコールを使えば24時間体制で介護ステーションが機能し、必要な人材を送り届けるシステムになります。
訪問回数の制限がなく定額制であることから、事業者側にとっては厳しい面もありますが、今後独居の高齢者が増加していくことを考えると、なくてはならないサービスであることは間違いありません。
「オーダーメイド対応」の実践
小規模多機能型居宅介護
▽未来の介護の姿。オーダーメイド対応を実践
2006年に介護保険法改正により制度化された小規模多機能型居宅介護事業は、今後の高齢化社会の新たな介護のあり方としてスタートしました。
24時間365日、通いを中心に、訪問と宿泊、3つのサービスが同じ事業所で受けられる介護サービスです。デイサービスのように入浴や食事の介助を中心に利用する“通い”、体調がつらい時や、家族が不在の際にショートステイのように活用できる“宿泊”、さらに自宅で在宅介護サービスを受けられる“訪問”の3つのサービスを使って在宅生活を継続する、オーダーメイド介護といったイメージです。
すべてのサービスを同じ施設のスタッフが行うため、家族にケアされているのと同じような安心感を得られることや、利用回数にかかわらず月額定額負担ですむなど、利用者にとってはメリットの大きいものになります。
介護スタッフ側にとっても、スタッフ同士の連携が密にできるため、利用者の状態を把握しやすく、よりよい介護につなげることができるという利点があります。その半面、2014年度の赤字施設の割合が48.9%(独立行政法人福祉医療機構「平成26年度小規模多機能型居宅介護事業の経営状況について」より)と、経営状況の厳しい事業ですが、この事業を継続していくことが、地域医療を担う法人に課せられた役割だともいえます。
[写真]小規模多機能型居宅介護
また、訪問看護と小規模多機能型居宅介護事業を組み合わせて「看護小規模多機能型居宅介護」という名称での事業も開始され、2016年10 月時点で、330の事業所が登録を行っています。