2013年以来、習近平政権の看板政策として掲げられた「一帯一路」。中国内では構想実現に伴う膨大な資金需要やリスク、収益性が懸念されている。本連載では、「一帯一路」プロジェクトの現状と課題、当局対応の状況などを解説する。最終回は、「一帯一路」に関わる中国当局の思惑を見ていく。

一部海外からは「摻有私貨」との指摘も・・・

前回の続きである。

 

以上の資金面の検討から、いくつか、一帯一路に関わる中国当局の思惑が見えてくる。

 

第1に、国家開発銀行が中心になって供与している人民元融資に関連し、一部海外からは“摻有私貨”、つまり「一帯一路」の看板に人民元国際化推進という別の政策目的を潜り込ませるもので、中国の潤沢な外貨準備目当てに一帯一路に参加している諸国を失望させているとの指摘がある(17年5月14日付美国之音)。これに対し、人民銀行(中央銀行)は相手国が中国からの財貨・サービスの輸入で人民元決済を行うことで、外貨交換に伴うリスク、コストを避けられる点を強調している。

 

第2に、構想が打ち出されて以来、海外から一帯一路は過剰生産能力の対外輸出だという批判が出されている。前回紹介した、経済面から一帯一路を正当化する中国内の論調は一定の理屈はあるが、経済体制が根本的に変わらない限り、中国は投資主導の成長パターンを前提にせざるを得ないことを事実上認めており、海外の批判をかわすに至っていない。

海外の懸念払しょくに努める中国政府

第3に、中国金融関係者の間で一帯一路プロジェクトが持つリスクや収益性に鑑み、世銀等の伝統的国際開発金融機関が沿線諸国との政策対話、沿線諸国が持っていない知識、能力、経験の活用、それに基づく沿線諸国の人材育成や政策策定能力向上支援、他の資金を誘発する力といった点で、重要な役割を果たすことを期待する声が大きい(17年8月21日付界面他)。

 

これに関連し、中国以外の資金源を網羅することで、様々な資金ルートで膨大な資金需要に対応すれば構想は非現実的ではないこと、一帯一路は中国が「独角戯」、つまり一人芝居するものではなく(17年5月13日付中国新聞網)、「人類運命共同体」構築のため、関係国がその概念を共有し取り組み、共にその成果を享受する「共建共享」原則の下で行われるものであること(17年10月24日第19回党大会党規約修正決議)、言い換えれば、一帯一路は拡張的対外戦略の一環ではないことを示し、関係国の警戒感を払しょくしようとする意図が見てとれる。

 

(第19回党大会、党章改正決議抜粋)

「人類運命共同体構築を推進し、共にビジネス・建設を行い、共に利益を享受するとの原則(共商共建共享)の下、一帯一路建設推進等の内容を党章に記載する。これらの内容を充実させることは、党の人民解放軍に対する絶対的な指導、国防・軍隊の近代化、民族団結強化、我国の開放型経済の水準向上に資する。」

(出所)17年10月24日付新華社報道より筆者訳出。

 

 

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