2013年以来、習近平政権の看板政策として掲げられた「一帯一路」。中国内では構想実現に伴う膨大な資金需要やリスク、収益性が懸念されている。本連載では、「一帯一路」プロジェクトの現状と課題、当局対応の状況などを解説する。今回は、中国の一帯一路構想における「資金ルートと融資実績」を見ていく。

輸出入銀行と開銀が長期ローンを供与

前回の続きである。

 

構想を主導する中国自身の重要な資金ルートは下記の図表の③〜⑤と、①のうち特にAIIBとシルクロード基金で、援助の性格が強い資金(輸出入銀行、AIIB)と、商業銀行の資金が混在している。

 

[図表]一帯一路の資金ルート

出所:2017年8月15日付民生証券マクロレポート等より作成
出所:2017年8月15日付民生証券マクロレポート等より作成

 

統一的なデータは見当たらないが、各機関ウェブサイトや地元報道(2017年8月15日付民生証券マクロレポート等)から、これまでの融資実績をみると以下の通り。

 

●国家開発銀行、中国輸出入銀行

 

開発銀行は中長期ローン主体で、17年までに2500億ドル以上の融資承認、17年末融資残高は1100億ドル以上(同行国際業務の35%)。カザフ、ラオス等8か国との2国間協力、中・ロ・モンゴル、中パ、中・バングラ・インド・ミャンマーが関係する3つの経済走廊(回廊)計画に参画。エネルギー、設備製造、鉱物資源、交通インフラなど主要分野を網羅。また13年以来、関係国に中国製品・サービス購入のため400億元の人民元融資を実施しており、高峰論壇でさらに2500億元規模の人民元融資をコミット。17年12月には香港市場で初の一帯一路債(3.5億ドル、調達資金を全て一帯一路プロジェクトに使用)を私募形式で発行。

 

輸出入銀行は開銀より譲許性の高い(融資条件の緩い)長期ローンを供与。14年〜17年上期、沿線諸国50か国以上、約1200のプロジェクトに7000億元以上融資。分野は70%以上が高速道路、鉄道、空港、水運等の交通インフラ。17年8月、工商銀行との間で政策性資金と商業性資金を協調融資する協定を締結。

中国商業銀行では中国銀行と工商銀行が主体

●中国商業銀行

 

中国銀行と工商銀行が主体。中国銀行は16年末の進行中プロジェクト約420。将来的に沿線諸国プロジェクト割合を50%以上にすること、15〜17年融資額1000億ドルを目標(15〜16年実績600億ドル、17年400億ドル予定)。

 

工商銀行は17年3月までに累計212のプロジェクト、674億ドル融資承認。アジア、アフリカ、欧州30か国以上、電力、電信、交通、機械等重要基幹産業を対象。建設銀行は累計14の沿線諸国、46プロジェクトに60億ドル弱を融資。農業銀行の一帯一路への関わりは相対的に薄い。16年以降、沿線諸国への農業関係の国有企業、大型民間企業進出支援強化。14〜16年の対外進出支援融資は117か国925億ドル、うち沿線諸国42か国。

 

その他、交通銀行や中国郵政儲蓄銀行を含め、9行が沿線26か国に62拠点(16年末時点18現法、35支店、9駐在員事務所)を設置。なお香港筋の情報として、中国、工商、建設、農業の4大銀行が内外から資金を集め、プライベートエクイティファンド(PE)の形で一帯一路専用基金を設立する動きがある(総額数百億ドル、17年8月22日付ロイター中国語版)

 

この話は次回に続く。

 

 

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