積極的外交政策への転換の象徴となった「一帯一路」
一帯一路は習近平政権が2013年以来、看板政策の1つとして位置付けてきたものだ。2017年5月、中国は北京で初の「一帯一路」に関する国際会議「国際協力高峰論壇」を主催、さらに、日本ではあまり注目されなかったようだが、10月開催された5年に一度の党大会では「一帯一路推進」が党章(党規約)に盛り込まれるに至った。
海外からは今や、中国が伝統的な目立たない外交(鄧小平が提唱した韬光养晦<タオグアンヤンフイ>)から、積極的外交政策に転換した象徴と受け止められている。構想が提唱された段階から、海外で政治外交面の警戒感が示されてきたが、中国内では構想実現に伴う膨大な資金需要をどう賄うのか、プロジェクトのリスク、収益性をどう考えるのかという経済面の問題意識が高まっている(「一帯一路」構想の背景や内容の詳細はこちら)。
構想実現には「膨大な資金」が必要
一帯一路は元来、新彊、パミール高原を経て、中央アジア、欧州、北アフリカに向かう陸上シルクロード経済ベルト(帯)と、中国東南沿海部を始点とし、南アジアを経て、アフリカ、欧州に向かう21世紀海上シルクロード(路)を一対として名付けられた。2017年5月、中国は北京で初の「一帯一路」に関する国際会議「国際協力高峰論壇」を主催し、政策調整、インフラ建設、貿易円滑化、資金支援、文化交流の5分野で270項目以上の具体的成果があったとした。
一帯一路沿線諸国への直接投資は2014〜16年500億ドル、中国企業の新規建設工事請負契約3049億ドルだ。17年は各々59ヶ国143.6億ドル(前年同期比1.2%減)、61ヶ国1443.2億ドル(同14.5%増)で、資本流出抑制策を受け対外直投全体が33.5%減と大きく減少する中、沿線諸国向け投資は相対的には堅調で、対外直投全体、また海外での新規建設工事請負契約に占めるシェアは各々、16年8.5%、51.6%から12%、54.4%へと上昇した(中国商務部)。
中国国務院発展研究センターは、一帯一路沿線諸国での基礎インフラ投資需要を、2016〜20年総額で10.6兆ドル以上にのぼると推計している(アジア開発銀行ADBはアジア太平洋地域で年間8000億ドルと推計)。
問題はこの膨大な資金需要をどう調達するかだ。高峰論壇前後に、中国の当局やシンクタンクが発信した情報を基にすると、中国は資金ルートとして、進出中国企業自身の資金、協力提携先の協調融資、金融機構を通じる資金、プロジェクト進行過程でPPP方式等を通じて動員される種々の民間資金の4つを想定し、このうち金融機構を通じる資金を主要資金源と位置付け、これをさらに5類型に分類している。
[図表]一路一帯の資金ルート