1250万円で投資できる不動産となると・・・
前回のシミュレーション結果は、例えばワンルームマンション投資と比べるとどのように評価できるのでしょうか。ここでは初期投資額に対してどの程度のリターンが得られるのかという視点から簡単に見ておきましょう。
まず初期投資額です。太陽光発電投資のこの例では1250万円です。同程度の水準で取得できるワンルームマンションを探してみましょう。「アットホーム」という不動産総合サイトで東京区部を対象に検索すると、ワンルームといえどももはや区部には新築物件は見当たりません。
築25年以内にまで広げて抽出された53件のうち、比較的家賃水準の高いと思われる東急田園都市線二子玉川駅エリアに立地する一つの物件に着目します。同駅から徒歩10分強で、しかも築20年近くだけあってか、売却希望価格は1290万円と何とか同水準と言えそうな額です。中古のマンション価格は上がっている時期だけに、ワンルームマンションといえども、東京区部で1250万円程度の築年数のそうたっていない物件を取得するのは容易ではありません。
仮にこのワンルームマンションに投資した場合、リターンはどのように考えればいいのでしょうか。同じく「アットホーム」に掲載されている賃貸物件を見てみましょう。
このマンション内のものは見当たりませんでしたが、近隣で同じような条件を持つワンルームマンション内の賃貸物件が2つ見つかりました。投資対象とするマンションと築年はほぼ同じ。二子玉川駅からはやや近く、住戸面積はやや広めです。それで、月額の募集家賃は管理費等まで含めて8万円前後です。
異なる物件を用いた粗っぽい計算ですが、家賃水準を8万円と想定すると、表面利回りは7.7%と算出されます。初期投資額に対する年間家賃収入の割合を単純に計算する表面利回りと比べても、太陽光発電投資のほうが優位であることが分かると思います。
「出口戦略」が描きづらいマンション投資
しかもこの表面利回りは、現在の、しかも入居者が確保できた段階での数字です。建物は築20年近くからさらに古くなっていきますから、向こう20年間にわたって同程度の家賃水準が保証されるとは限りません。20年の間には入居者が確保できない時期もあるかもしれません。それらを、この表面利回りは無視しているわけです。
それでも、この表面利回りを前提に初期投資を回収できる時期を計算すると、13年目になります。それ以降に得られる家賃収入はまるまる手元に残るとはいえ、同時に築30年以上のワンルームマンションも残されます。途中、改修工事を施していれば別ですが、追加投資していなければその設備は30年前のものです。マンション全体の管理状況にもよりますが、建物全体の資産価値がどの程度維持されているかも疑問です。入居者の確保は古くなるほど難しくなるのは間違いありません。
一方で、市場で売却処分するにも、それが容易にできるか疑問です。築30年以上のワンルームマンションをだれが取得するのでしょうか。一番に考えられるのは投資家ですが、将来的にも入居者を確保することができるような投資価値の見込めるマンションなら、逆に手放す必要はありません。売れるのであれば何も売る必要はない、というパラドックスです。
ワンルームマンション投資には出口戦略を描けるかという問題がつきまといます。そう考えると、東京区部にいま1250万円程度の額で投資用にワンルームマンションを取得するのは、とても賢い選択とは言えそうにありません。