太陽光発電投資の事業収支を改めて見てみると・・・
本連載では、その太陽光発電投資の旨みを、事業構造をもとに具体的に見ていくことにしましょう。
まず、発電量による収支シミュレーションの結果をご覧ください。
●パイル内訳書
●収支計算書
これは、広島県内のある場所で出力50kWを前提とする太陽光発電システムを設置した場合、事業収支がどう推移するかを試算した結果です。太陽電池パネルには、1枚当たり出力255Wの太陽電池モジュールを216枚用いています。このモジュールというのは、製品化された太陽電池の一つの単位です。255Wを216枚ですから、単純に計算すると、発電出力は255×216で55.08kWになります。
ただここでは、パワーコンディショナーと呼ばれる機器に定格出力5.5kWのものを8台、つまり計44kW、設置することを想定しています。この場合には、合計出力の小さなパワーコンディショナーの数値が採用されるため、システム全体としての出力は44kW相当という見立てになります。
初期投資は内訳書に記載した通り、太陽光発電システムを設置するのに必要な投資額は消費税を含め1250万円です。パイル内訳書に記載されている「調整」という項目は、合計金額を切りの良い数値にするための一種の値引きです。それによって、税込み金額を1250万円に落ち着かせているわけです。ランニングコストは大きく、運転維持費と減価償却費と租税公課の3つに分かれます。このほか、事業収支が黒字であれば、法人税(個人事業であれば所得税)が課されます。
実質利回りベースで年間10%前後を確保
毎年度掛かるこれらのランニングコストに対して、売電収入を見込みます。売電単価は買取価格であるキロワット当たり27円+消費税に相当する29.16円ですから、売電量を想定すればいいわけです。それが積算発電量です。
これは、1枚当たり出力255Wの多結晶型太陽電池モジュール216枚を真南方向に傾斜角10度で並べた前提で、毎月の発電量を推計した結果です。1961年から90年まで30年間にわたる毎月の平均日射量データをもとに、月々の発電量を求めています。最大は5月で6951kW、最小は12月で2550kWですから、倍以上の開きがあるわけです。年間予想発電量は5万8351kWです。
売電単価とこの年間予想発電量をもとに売電収入を計算すると、初年度は170万1503円になります。このシミュレーション上、年間予想発電量は年間1.0%ずつ減っていく前提に立つので、売電収入も次年度以降、同じく1.0%ずつ減っていく想定です。この年間1.0%減は発電劣化率に基づくものです。経年劣化によって太陽電池モジュールやパワーコンディショナーの性能が低下していくことを踏まえています。
固定価格での買取期間である20年間にわたって、こうして算出される事業収支を見ると、経費を差し引いた実質利回りベースで年間10%前後を確保できていることがまず分かります。減価償却費と租税効果は毎年度減額していくのですが、一方で、売電収入が毎年度発電劣化率によって減額していくので、実質収益もやはり毎年度少しずつ減額していくわけです。それでも、年間利回り10%というのは、魅力です。
実質利回りの累計が100%を超える10年目は、初期投資を回収し終える年度です。10年間で元が取れるわけですから、残りの10年間はすべてが手元に残る利益ということになります。その額は、実質収益の合計2474万4531円から初期投資1250万円を差し引いた1224万4531円。これを買取期間である20年で割れば、61万2227円ですから、初期投資の回収が確実なうえに年間60万円以上の収益が見込めると言うことができます。