前回は、介護保険制度の仕組みについて紹介しました。今回は、最低生活費に満たない部分を支援するシステム、「生活保護」の詳細を見ていきます。

低所得層に用意されているさまざまな救済措置

生活保護の受給というと、「後ろめたい、心証が悪い」などと考え、抵抗感のある人が多いと思います。近年メディアで騒がれた不正受給の報道も、生活保護のイメージ悪化に拍車をかけてしまいました。

 

生活保護は、「生活のすべてについて丸ごと面倒を見てもらう制度」というイメージがありますが、実際はそうではありません。高齢や病気などによって生活費や医療費に困り誰にも頼れないといった時で、収入が国の決めた最低生活費に満たない場合、その差額分が「保護費」として支給される仕組みです。

 

高齢者世帯の中には、年金生活を送っていて、「国のお世話にはならない」「世間体が悪い」などという理由で生活保護を受けるよりも少ない生活費で頑張っている人が大勢います。介護サービスの利用や病院の受診を我慢して、生活の質を著しく悪化させている人も少なくありません。

 

しかし、低所得層にはさまざまな救済措置が用意されています。生活保護もその一種であり、なんら恥ずべきものではありません。困窮して取り返しがつかなくなる前に、一度問い合わせをしてみてください。

全面的な扶助ではなく、個別の状況に応じた利用が可能

また、あまり知られていませんが、生活保護には、生活を営む上で必要な費用について各種の扶助が用意されています。全面的に扶助を受けるのではなく、個別の状況に応じて、必要な扶助を選べるため、たとえば介護費や医療費についてのみ利用する、といったこともできます。

 

・生活扶助(食費・被服費・光熱費など日常生活に必要な費用)
・住宅扶助(アパートなどの家賃)
・医療扶助(医療サービスの費用)
・介護扶助(介護サービスの費用)
・葬祭扶助(葬祭費用)

 

たとえば年金収入が月額6万8000円しかない場合、厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費が9万円だとしたら、残りの2万2000円を生活保護で受け取ることができます。また、持ち家や土地、自家用車があると生活保護を受けられないとよくいわれていますが、地域によっては一定の要件のもとで所有することも可能です。

 

全国各地の「生活保護支援ネットワーク」など生活保護の相談窓口や、「よりそいホットライン」(0120‐279‐338、全国24時間通話無料)に問い合わせてみましょう。

 

なお、生活保護を受給していても特別養護老人ホーム(特養)などの施設に入所することはできますし、サービス内容もほかの人となんら変わるわけではありません。ただ、生活保護を受給していて特別養護老人ホームに入所する場合、自治体の担当者の認識次第では、現在主流のユニット型ではなく多床室でなければいけないという判断をされてしまう場合があります。事前に確認しておきましょう。

人生を破滅に導く「介護破産」

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杢野 暉尚

幻冬舎メディアコンサルティング

介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る──といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。 親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い…

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