前回は、遺言書に添える家族への最後のメッセージ「付言」を取り上げ、その活用法と効果などを解説しました。今回は、遺言書の「効力」について改めて見ていきます。

「親から見た平等」を実現できる遺言書

主に相続争いを防ぐために作成を考えてきた遺言書ですが、ここではそれ以外の効力についても触れておきます。大きな効力としては、法定相続通りでない分配の指定ができること、法定相続人以外にも遺産相続ができることがあります。

 

遺言書は親から見た平等を実現することができます。また、生前に介護などでお世話になった人に対して、お礼の意味での財産を渡すこともできます。しかも、遺言書は法律で効力が規定されていますので、何よりも優先されます。そういった意味でも、亡くなった人の意志が実現できる可能性が高いものです。

遺言書の記載ですべてが決まるわけではないが・・・

ただし、一点注意しておかなければならないことがあります。それは、「遺留分」というものです。遺留分とは、民法上で決められた、相続人が最低限相続できる財産のことです。

 

例えば、これは極端な例ですが「愛人に全財産を相続する」と遺言書に書いた場合、それで完全に遺産の分け方が決まってしまえば本来の相続人である妻や子どもは1円ももらえず、下手をすれば生きていくのも困難な状態になってしまいます。また、「長男には一切財産を相続させない」という遺言も、長男としては納得できないでしょう。

 

このように遺言者のあまりにも偏った意志で、残された家族が生活に困るような事態を防ぐため、法律では本人が自由に処分できる資産の割合を制限して、相続人には一定の割合を残すよう定めています。つまりこれが遺留分というわけです。

 

遺留分の割合は、法定相続人が誰になるかによって決められています。大半の場合は、法定相続分の2分の1です。参考までに「愛人に全財産1億円を相続する」と遺言書に記載があっても、妻と子どもは合わせて2分の1の遺留分を持っています。この例では、妻と子どもには5000万円の遺留分があることになります。

 

ただし、この場合、妻と子は愛人に対して減殺請求というものを一年以内にしなければ、全額愛人のものになってしまいます。身勝手な遺言でもそういった効力があるのです。遺言書を作成するのであれば、そういった遺言書の効力は知っておかなければ、本当の意味での有効活用ができないのです。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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