前回は、遺言書によってスムーズに行われた相続の事例を紹介しました。今回は、「自筆証書遺言書」と「公正証書遺言書」の特徴について見ていきます。

相続時のトラブルも多い「自筆証書遺言書」

今回は、遺言書の方式を紹介します。主に2つが使われますが、それが「自筆証書遺言書」と「公正証書遺言書」です。それぞれの特徴を紹介します。

 

名前の通り、遺言者本人の自筆によって市販の便せんなどにボールペンや万年筆で、遺言の全文と氏名、日付を書き、署名、捺印する遺言書です。内容を誰にも知らせずに済み、費用もかからず、証人(立会人)も必要ありません。


しかし、自筆証書遺言書は多くのトラブルを招きます。いざ、相続となって遺言書を開けてみたら、そもそもそれが本人の直筆かどうかをめぐって争いになることがあります。相続人全員が直筆と認めたとしても、様式や内容に欠陥があって法的効力がなかったり、資産の記載方法が間違っていて相続手続きができなかったりするケースが多々あります。


また、自筆証書遺言書には保管場所の問題もあります。机の引き出しの奥底では、死後、発見されない可能性があります。そうはいっても誰にでもわかりやすい場所に保管しておくと、相続人が勝手に探し出し、遺言書に自分の都合のよくないことが書かれてあった場合、それを破り捨てても誰も気が付かないというリスクがあります。


そして何よりも自筆証書遺言書は、相続発生後、印のあるものは開封せず、そのまま家庭裁判所に持っていき、「検認」の申し立てを行わなければなりません。申し立てをしてからおおよそ1カ月後の家庭裁判所が決めた日に、相続人立ち会いのもとで開封し、検認の手続きを行います。つまり、少々手間がかかるのです。


この時の検認は遺言が有効か無効かを判断するものではなく、認定を受けた遺言書でも、その後、内容の不備で無効になる場合もあります。

遺言者の意志が確実に残せる「公正証書遺言書」

公正証書遺言書は、内容が公証人によって確認され、原本が公証役場に原則として20年間保管されます。作り方は、公証役場において遺言者と証人2人の立ち会いの場で、遺言者が口述した内容を公証人が筆記して遺言書を作成します。


実際の遺言書作成は、遺言者本人が内容を記憶し、口述するのはなかなか大変なので、ほとんどは税理士等が本人から要望を聞き、事前に公証役場の公証人と打ち合わせを行い、たたき台となる書類を作成し、それを持ち帰って本人に内容確認、了解を得ます。ですので、意外と本人の労力はかかりません。


後日、本人は公証役場に出向きます。その時には遺言書はほぼ完成状態の書類になっています。その場で遺言者としての本人確認と意思能力が公証人から認められれば、公証人が遺言書を仕上げてくれます。


その後に、遺言者、証人2人の確認を取るため、公証人が作成した遺言書を読み上げるか、閲覧させます。確認が取れると、遺言書に遺言者、証人がそれぞれ署名、捺印し、最後に、公証人が正規の手続きで遺言書を作成したことを付記して、署名、捺印することによって遺言書が完成します。


気になる手数料ですが、公正証書遺言書の作成費用は資産ごとに、
3000万円超〜5000万円以下↓2万9000円
5000万円超〜1億円以下↓4万3000円
1億円超〜3億円以下↓4万3000円+5000万円ごとに1万3000円を加算
3億円超〜10億円以下↓9万5000円+5000万円ごとに1万1000円を加算
10億円超↓24万9000円+5000万円ごとに8000円を加算
となります。


相続人が複数いる場合には、相続人・受遺者ごとに手数料額を算出し合算します。また、遺言を取り消す場合には、1万1000円の手数料がかかります。この費用は、資産の状況を考えればそれほど高くない金額だと思います。この程度で済むのであれば、自筆証書遺言書ではなく、公正証書遺言書にするほうが、遺言者の意志が相続人に確実に残せるのでいいのではないでしょうか。


公正証書遺言書は、公証役場の「遺言検索システム」に登録されるため、相続発生後、法定相続人ならどこの公証役場からでも遺言の写しをもらうことができます。

 

また、公正証書遺言書なら検認の手続きをする必要がなく、すぐに中身を確認して相続手続きを実行できます。公正証書遺言書の証人は2人必要です。相続人になる予定の人は証人になることができませんので税理士等がなることも多いです。筆者ももちろん喜んで遺言書の証人になります。

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    幻冬舎メディアコンサルティング

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