今回は、「2040年頃」の日本経済の姿を、4つのシナリオをもとに考察します。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、「第4次産業革命」以降の日本経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

資金が成長分野へ向かえば、経済成長もあり得るが・・・

経済産業省が発表した日本の経済成長戦略では、日本に「痛みを伴う転換」か「安定を求めたジリ貧」の2つの未来が示された。

 

この戦略をデザインした官庁、並びに有識者たちも、日本は第4次産業革命の波に乗らない限り、「安定を求めたジリ貧」の未来しかないという見解だ。しかし、果たして日本の将来には2つの道しかないのだろうか。2040〜50年ごろの日本の未来(姿)を考えてみたい。

 

まず、経済成長モデルの構成要素である「資本」「労働」「全要素生産性(以下TFP)」を観察した。日本の資本効率は低下し続けているが、今後、潤沢な資本が成長分野へ向かうだろうか。人口は中長期に減少傾向であり、労働生産性の伸びには期待できない。TFPも低下傾向である。また、日本の物価水準はデフレの状態のままだろう。

 

こうした観点から導かれる日本の将来は2つだ。

 

1つは、「ゆでガエル」。日本は潤沢な資産を糧に借金を繰り返し、徐々に資金繰りが悪化していく。人口動態の変化が緩慢であるため、経済情勢が次第に悪化していることを認識できず、危機回避能力にも乏しいまま。危機を認識した時には手遅れであり、深刻な経済状態に陥っているというシナリオだ。

 

次に「シェアリング」。政府は日本の経済規模が少しずつ縮小していく中で税制に関する意思決定を迫られる。労働人口が減少し、高齢社会を迎えて膨らんだ社会保障費に代表される公的負担分を増税にて補填するのだ。さらに、ベーシックインカム制度を導入し、所得の再分配を図ることで極端な格差を回避、新しい秩序(ルール)によって統治される社会が形成されるというシナリオだ。

 

一方、潤沢な資金が成長分野へ向かい、さまざまなイノベーションを起こしてTFPの向上を実現、経済成長を力強く牽引する未来もある。「黄金期」は第4次産業革命を機にビジネスモデルのイノベーションに成功した日本企業が新規雇用を創出、国民所得と税収の増加、財政も健全な水準を達成するというバラ色の未来のシナリオだ。

 

第4次産業革命により、経済格差が拡大する未来も

だがしかし、惨めな未来も想定される。「格差不況」というシナリオだ。第4次産業革命の到来にてAIやブロックチェーン技術が社会に浸透し、雇用代替が著しく進む。またそれらを活かしてビジネスモデルのイノベーションに成功した企業がグローバル競争の勝ち組となり、その他多くの日本企業が負け組に落ちぶれる。

 

企業倒産が相次ぎ、雇用は崩壊。経済格差が拡大する。失業者の増加、税収減少で財政赤字は一層に拡大。高税率への移行は資産保有者たちが海外へ資本を逃避させるきっかけになるだろう。

 

この資本逃避(キャピタル・フライト)は円安・インフレを招くにちがいない。まさに高い失業率とインフレが同時に発生するスタグフレーションが起きることとなる。私たちフィスコは2040〜50年に日本が迎える未来には、4つのシナリオがあると考えている。

 

FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

実業之日本社

フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議 本誌掲載の「日本経済シナリオ」の執筆を行った、フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議とは、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世…

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