今回は、相続人の担保責任について見ていきます。※本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

相続の公平さを担保する「民法911条」

例えば、あなたが実家に1000万円の価値があるという前提で実家を相続し、あなたの弟と妹はそれぞれ現金で1000万円ずつ相続するという遺産分割が成立したとします。ところが、後で実家に大きな欠陥が見つかって、その修理費用に900万円もかかるとしたら、あなたはどうしますか?

 

相続人の担保責任

「安心してください。担保されているんです!」

どういうことかといえば、法律上は相続分が平等であるきょうだいが、仮に法定相続分で遺産を分割したとしましょう。そのとき、実家という不動産を相続した人には、実は「隠れた瑕疵」(極めて難しい法律専門用語です。「隠れた」=一般的な注意では引き渡し時に気づけなかったという意味。「瑕疵」=欠陥やキズという意味)というものが潜んでいるリスクがあります。

 

いわゆる「見た目は分からなかったけれども、住んでみて初めて土台がシロアリに食われてボロボロだ」などというような場合に、公平なはずの相続が不公平な結果にならないように、法律(民法911条)できちんと手当てされているのです。

 

●民法911条(共同相続人間の担保責任)

各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。

損害賠償請求は「隠れた瑕疵を知った時から1年以内」

では、どのように解決できるのかといえば、実家を相続した人が、900万円の修理代について、相続分に応じて、弟と妹にそれぞれ300万円ずつの損害賠償を請求できるというわけです。

 

相続した土地を測量してみたら10坪も土地が少なかった。「坪100万円で評価した土地だから1000万円も少なく相続していた」などというような場合も、同じく他の相続人に対して相続分に応じた損害賠償が請求できます。

 

ただし、この損害賠償請求は「隠れた瑕疵を知った時から1年以内」に限られていますので、くれぐれも相続した不動産に欠陥があることが分かったら、損害賠償請求をする期間には気をつけてください。

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

藤戸 康雄

時事通信出版局

日本全国で約820万戸の「空き家」「所有者不明の土地」が九州の面積以上! 実家や土地は、もはや「負動産」不動産は捨てられない! 2015年1月から相続税の基礎控除が大幅に縮小され、課税対象となる人が増えました。「実家…

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