ドル/円で「200本のプライスをくれ」
値動き分析をどう活用するのか、私の経験から紹介しましょう。
私がニューヨークで為替ディーラーをしていたときのことです。東京の機関投資家から電話がありました。ドル/円で「200本のプライスをくれ」というのです。
そのときのマーケットの状況は、1ドル=110円より上には、輸出企業の「売り」がたくさんあると言われていました。となると、110円を超える可能性は低い。それを知った各銀行のディーラーは110円の手前で売って、少し下がったら買い戻して利ザヤを稼いでいました。よって109円90銭より下がらない状況になっていました。
大量の「買い」で他の為替ディーラーが損切りに走る
そこで、私はスプレッドを5ポイント(銭)として、プライスを出すにあたり、こう考えました。「売り勢力は強いが顧客が買ってきたら、110円の壁を突破するかもしれない。逆に顧客が売ってきてもカバーはできる」
そのときのマーケットプライスは109円90銭・109円95銭だったので5銭円安方向にずらし、109円95銭・110円00銭で顧客に提示すると、顧客は110円で買い注文を入れてきたのです。
急いでカバーに入りましたが、終わって5分ほどして相場が急騰しました。大量の「買い」が出たことで他の為替ディーラーが損切りに走ったのでしょう。