中長期の売買にも活用できる「値動き分析」
ここまで値動き分析の特徴をお話ししてきましたが、おそらく「値動き分析は短期売買には使えるが、中長期の売買には向かない」と感じているのではないでしょうか。とすれば、それは誤解です。長期の値動きを判断する方法としても、十分に活用できます。例として、貿易収支を値動き分析に活用する方法を紹介しましょう。
貿易収支とは、日本が海外に輸出した金額と海外から輸入した金額の差額のことです。輸出の額よりも輸入の額が少なければ貿易黒字といい、多ければ貿易赤字といいます。
「円安圧力」になる日本の貿易黒字
貿易収支は為替にどのような影響を与えるのでしょうか。たとえば、貿易黒字になると、海外から受け取る外貨よりも支払う外貨のほうが多くなり、日本企業はそれを円に交換しなければなりません。ドル/円の「売り」になるので、為替市場に円高圧力をかけることになります。これが貿易統計に値動き分析を適用したときの相場予測です。
日本は長い間、貿易黒字が続いていました。ところが2011年に東日本大震災が起きて、貿易赤字に転じました。震災で原子力発電がストップし、火力発電のための液化天然ガスが大量に輸入されたからです。実際、貿易黒字の間は円高に、貿易赤字に転換後は円安になっています。
[図表]