融通の効かない接客がクレームを生むことも
サービス業に携わる人が一番神経を使うのが、クレーム対応でしょう。
アメリカでは交通事故の場合、絶対に謝ってはいけない、謝ればこちらが悪いことを認めたことになる、などとまことしやかに言われています。そういう話を耳にしてきたせいでしょうか。ことさら外国人のクレームに対して、日本人は必要以上に身構えてしまう傾向があります。
たとえば、運悪く飛行機の乗り継ぎがうまくいかず、疲れ果ててしまったお客様がホテルにやって来たらどうでしょう。ホテルへ来る途中の観光もキャンセルして、大きな荷物を抱えてようやくホテルにたどり着いたとします。
「疲れているんです。チェックインできますか?」
そのときのお客様はもう、心身ともに疲れて極限状態です。ホテルのフロントは、お客様からすれば、渇きを抱えて砂漠を何キロも何キロも歩いて来た果てにようやく見つけたオアシスかもしれません。
(ああ、助かった!)
お客様はきっと、そう思っていらっしゃるはずです。そこでマニュアル通りに
「いえ、チェックインは3時からになっております」
と言われたら、お客様はどのように感じるでしょうか。
お客様の感情を推察する努力をせず、情報のみ提供している、何とも融通の利かない話です。お客様の落胆は想像に難くありません。落胆が怒りに変わるのは、時間の問題です。そこでお客様の怒りが爆発すれば、それはすでにクレームへと姿を変えたことになります。
理解に努めたい、お客様の「気持ち」「状況」
すべてのお客様を平等に、という心が働くあまり日本人はルールを順守しようとしますが、ルールはあくまでルールにすぎません。もちろん、お客様の生命に関わるような、絶対に守らなければならない原理原則もあります。
しかし、曲げられるルールもあるはずです。ただルールを守ることが最優先ではありません。疲れ果てたお客様の気持ちや状態を理解してあげる。そこには血の通ったお客様がいらっしゃることを私たちは決して忘れてはならないのです。
血の通ったお客様に対して、私たちのおもてなしにも血が通っていなければならないことは言うまでもありません。