入居者が重視するのは「家賃価格」「住宅の立地環境」
入居者の立場で言えば、賃貸住宅選びで重視する点は、家賃と立地です。国土交通省「住宅市場動向調査」の結果によれば、民間賃貸住宅の入居世帯がその賃貸住宅を選んだ理由として挙げているのは、「家賃が適切だったから」と「住宅の立地環境が良かったから」の2つがここ数年、毎年ツートップを構成しています(図表1)。できるだけ条件のいい場所に、できるだけ安い家賃で住みたいと考えるのは当然のことでしょう。
[図表1]民間賃貸住宅の入居世帯がその賃貸住宅を選んだ理由
できるだけ安い家賃で賃貸するためには収益性の見込める場所でありながら、土地代も建物代も可能な限り抑えられることが求められます。つまり、できるだけコストパフォーマンスの高い、別の言い方をすれば「割安感のある土地選び」がまず重要です。割安感があるという点で言えば、例えば都県境に近いエリアを選ぶという選択肢も考えられます。
土地価格の相場に関しては、標準地と呼ばれる場所の毎年1月1日時点の正常な価格を評価し公表する地価公示制度に基づく公示価格が、一つの参考になります。沿線別駅周辺住宅地の公示価格例を都市圏域ごとに公表しています。
駅周辺というのは、駅からおおむね1㎞程度の距離のことで、駅から歩いて10分余りの場所を想定しています。2017年公示価格によれば、東京圏の場合、いくつかのターミナルから30分圏内でいうと、新浦安で1㎡当たり24.9万円、鶴見で同じく28.6万円、日吉で同じく34.6万円です。参考までに、自身が狙っているエリアの価格水準を頭に入れておくといいでしょう。
「土地選び」が自己居住の満足度と賃貸の成否を決める
賃貸併用住宅は自己居住用と賃貸用という二面性を持ちます。したがって、自己居住用として満足できる立地、賃貸用として事業性の見込める立地、そして価格面で割安感の見込める立地、これら三つのバランスをうまくとることが求められます(図表2)。
この土地選びこそが、自己居住用としての満足度も賃貸用としての成否も決めることになるだけに、賃貸併用住宅の購入を成功させる上で非常に重要なテーマと言えます。
[図表2]賃貸併用住宅における【立地】3つのポイント
不動産・住宅に関する総合情報サイトSUUMOが発表している『住みたい街ランキング2016年度版』によると、関東の「住みたい街ランキング」として1位に恵比寿、2位吉祥寺、3位横浜が挙げられています。
一方、関東の「穴場だと思う街」ランキングとして1位に北千住、2位に赤羽がランクインしています。北千住、赤羽とも利便性の高さから賃貸需要が見込める一方で、自己居住用としても悪くありません。それでいて地価水準は比較的低く、割安感があります。
そのほかに、自己居住用としての満足、賃貸用としての事業性、価格面での割安感という三つのバランスの取れた立地としておすすめできるのは、都心へ30分で通える「周辺三県との県境」です。
これは例えば埼玉県草加市や同県三郷市です。またターミナル駅の日暮里から北に伸びる日暮里・舎人ライナーや同じくターミナル駅の秋葉原から北東方向に伸びるつくばエクスプレスで、埼玉県に入ってすぐの駅を含む三つ程度の駅を最寄り駅とするエリアも狙い目だと考えられます。
こうしてどんどんエリアを絞り込んで探していくと、実際に売りに出ている土地の具体的な情報が知りたくなります。次はいよいよ具体的な候補地の土地で良し悪しを見極めていきましょう。まず、建物を建設できる土地か否かをチェックします。ここで注意すべきこととして、具体的に、法規、道路付け、権利関係といったものが挙げられます。これらについて、次回以降でくわしく解説します。