マイルやポイントは、税務の専門家も注目するテーマ
よく聞かれる質問ですが、実はこの問題は、税務の専門家の世界でも「今後大きな議論の的(まと)になるだろう」と言われています。
仕事で出張するとき、飛行機のチケットを自分のクレジットカードで購入し、あとで経費として精算するというケースは多いと思います。
この場合、当然ですが、個人としては単にチケット代を立て替えただけであり、実際にお金を出しているのは会社ということになります。
ただし、チケット購入に伴うマイルは、個人のカードに加算されます。出張の多い人なら、マイルがどんどん貯まっていくはずです。
また、会社の備品などを個人のクレジットカードで購入した場合も、カードのポイントはやはり個人に加算されます。さらには、楽天やアマゾンなどのネットショップや家電量販店など、いまやあらゆる場面で買い物をした際にポイントが発行されます。その人はカードを使って、一時的に会社の出費を立て替えただけなのに、ポイントは自分の名義でいくらでも貯められるのです。
では、みなさんはそのマイルやポイントをどのように処理しているでしょうか。
「出張で貯まったマイルを使って、ときどき家族で旅行を楽しんでいる」という人もいるかもしれません。逆に、「仕事の経費で貯めたマイルを、私用で使うことは禁止されている」という会社もあるでしょう。
なかには、「会社では特に規定がないので、直属の上司次第。上司がOKと言えば、マイルを私用に使ってもかまわない」という会社もあるようです。
「マイル=現物支給のボーナス」という考え方も!?
しかし、このマイルやポイントは、本当に個人のものとして使ってしまってよいものなのでしょうか。
これはいわば、会社の経費を使ったおまけのサービスを、個人が受け取っているということになります。そのマイルを使って旅行や買い物をするということは、見方を変えれば、会社が「ボーナスを現物支給している」と捉えることもできるわけです。
もし「会社の経費を使ったことによって加算されたマイル=現物支給のボーナス」という解釈が成り立つなら、そのマイルは税務上、「給与」と見なされます。
そうなれば、所得税法ではマイルも課税の対象となります。同時にマイルの分だけ、毎月の給与から源泉徴収される額も増えることになります。
給与をもらっているサラリーマンにとっては、あまりいい話とは言えません。
「ただでさえ給料が増えないんだから、それぐらいはおおめに見てよ」と言いたくなる人も多いでしょう。マイルを給与と解釈するかどうかは、専門家の間でもまだ議論の分かれるところです。
しかし、これだけマイルが普及し、個人に加算されるポイントも大きくなると、税務署としても見過ごすわけにはいかなくなるでしょう。理論上は「会社のお金を使って個人が便益を受けている」ことには変わりはないので「そこは厳しくチェックしていくべきだろう」という声が強まってもおかしくはありません。
「いつ課税対象になってもおかしくない」と覚えておく
もし国税庁が鶴のひと声で「今後はマイレージやポイントを重点的にチェックしろ」という方針を打ち出せば、現場の税務調査官たちもそれに従うことになります。そうなれば、会社としても社内規定を変えて対応せざるを得なくなります。
もしかしたら、ある日突然、「出張の旅費精算をする際は、加算されたマイレージも申告すること」というルールができるかもしれません。
現在はまだ議論の過程であり、マイルやポイントの扱いが曖あい昧まいなために見逃されていますが、いつ課税対象となってもおかしくない状況にあるということは覚えておいたほうがよいでしょう。
[図表]マイルやポイントの扱いは議論の分かれるところ
図版・イラスト:桜井勝志