病院建築の依頼・・・ゼネコンと設計会社のメリット・デメリット

前回は、「建築基準法」が病院建築の大きな壁となる理由を説明しました。今回は、病院建築を依頼する際に知っておきたい、ゼネコンと設計会社のメリット・デメリットを見ていきます。

高い技術力を持ち、発注の手間もかからない「ゼネコン」

前回までの連載では、ほかの建物とは異なる病院設計ならではの特徴をまとめてきました。だからこそ慎重に設計会社を選択したいものですが、その選択肢と選定の方法はいくつもあります。

 

まず、選択肢について。病院のような大きな建物を建てる際は、総合建設会社(ゼネコン)に設計から施工までを依頼する方法と、独立した設計会社に設計を依頼し施工は施工会社に依頼する方法、という大きく二つの選択肢があります。

 

後者の場合は、いわば医薬分業の理念と同じく、施工の監理は設計会社がしっかりと担当することで、建物の経済合理性を強固に担保するのが一般的です。

 

両者の違いを下記の表に掲げました。

 

[図表]設計会社の選択肢

 

ゼネコンに発注する場合は、ゼネコン内部で設計も施工も行いますので、設計会社や施工会社と別々に折衝する手間が省けます。設計担当者は自社の施工技術を理解していますから、設計時点でその会社独自の技術の導入も見込めます。また、折衝窓口が一つに絞られているため、何か問題が発生したときの相談・苦情の相手もはっきりしています。

 

しかしその反面、一つの企業のなかで設計・施工を完結させるため、設計・施工の間でお互いをチェックしあう機能が働きづらくなります。また、同一企業内で施工するとなると、医薬同業と同じように、自社の利益確保のために、コストを抑える生産性優先の設計になる可能性が古くから指摘されています。

 

工事内容の透明性が高く、管理の質も高い「設計会社」

これに対し、中立的な立場である設計会社に依頼する場合は、設計会社と施工会社がコストや技術を互いにチェックしあうため、工事内容の透明性が高くなります。施工会社の都合やコストに左右されることなく、設計や監理の質を確保できるため、建てる側の意向をしっかりと反映させた経済的な建物ができあがる可能性が高くなります。

 

しかし、発注者は施工会社を別途に選択するという手間をかけなければなりません。また、設計時点では施工会社がたいてい未定ですから、施工会社独自の技術力を取り入れた提案は初期の段階では期待することができません。

 

さらに、折衝窓口が設計会社と施工会社に分かれますので、あらかじめ瑕疵の責任区分を明確にし、メンテナンス対応者、相談先をはっきりさせておくことが重要です。こうした問題を解決するため、行司役としてPMr(プロジェクトマネジャー)を参加させるケースも近年増加しつつあります。

 

本連載は、2017年8月30日刊行の書籍『病院再生の設計力[増補改訂版]』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「建設設計の力」で病院経営を改善する方法

1932年、建築家・久米権九郎によって創立された≪久米設計≫では、「人と社会への貢献」の理念のもと、「建築設計・監理」にとどまらず、「各種マネジメント&ソリューション」「環境設備エンジニアリング」「構造エンジニアリング」を柱にしたトータルソリューション業務を展開。おもに、事業の企画段階から設計、竣工後の運用アドバイスまで、一貫したサービスを提供している。とくに、業界に先駆け、同社内に「医療福祉設計部」を立ち上げるとともに、病院・介護施設などの設計プロフェッショナルたちが集まる「病院設計タスクチーム」では施主が抱える様々な課題解決を目指し、トータルな医療福祉コンサルティングサービスに取り組んでいる(写真は常務、執行役員の佐藤基一氏)。

著者紹介

病院再生の設計力[増補改訂版]

病院再生の設計力[増補改訂版]

久米設計 病院設計タスクチーム

幻冬舎メディアコンサルティング

【病院の設計から、経営を改善する―― 数々の病院を再生させてきた百戦錬磨のプロ集団が、設計のプロセスを公開 】 情報化・高齢化による市場の変化や度重なる医療制度改革にさらされ、病院経営は、年々厳しさを増しています…

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